竹中平蔵という日本の労働生産性を下げた張本人
さて、竹中平蔵氏の話に戻しましょう。
日本経済は90年代後半から「賃下げ容認、雇用軽視」の方向に舵を切ってしまいましたが、その動きを猛烈な勢いで加速させたのが、竹中平蔵氏なのです。
このメルマガでも何度か触れましたが竹中平蔵氏は、日本の賃金低下を強力に推し進めていた人物です。
竹中平蔵氏が、小泉内閣での経済政策を一手に引き受けるようになったのは平成13(2001)年のことです。
彼は、かねてから「日本人の賃金は高すぎるから下げるべし」「賃金が下がった分は投資で儲ければいい」などという、日本経済の現状をまったく無視しした主張を持っていました。
そして小泉内閣で、経済財政政策担当大臣に就任するとその持論通りの経済政策を行いました。
企業が賃下げや解雇をすることを容易にし、大企業や投資家の税金はべらぼうに安くしたのです。
前掲の平均給料の表を見れば、日本の平均給与は小泉政権の時代に大きく下がっているのがわかります。
小泉政権の時代というのは、当時、史上最長とされた好景気の時代もあったのです。
にもかかわらず、この時代にサラリーマンの平均給与は大きく下がっているのです。
この賃金低下が、国民生活を圧迫し、日本の労働生産性を引き下げた大きな要因なのです。
つまりそれが「平成の失われた30年」の大きな要因であり、竹中平蔵氏の経済失策だといえるのです。
にもかかわらず、竹中平蔵氏は「日本人は労働生産性が低いので賃金を上げなくていい」などと、述べているのです。
「まったくどの口が言うのか?」「日本人の労働生産性を下げたのはお前だろう?」という話です。
近代の経済政策では、賃金を上げることが最重要なテーマとなっています。
賃金を上げることは、国民の生活を守るためでもあり、経済を発展させるカギでもあるからです。
たとえば、アメリカの株価なども、賃上げがされると上がる傾向があります。
それは、賃金が上がれば社会全体のお金の流れがよくなるということを示しているのです。
しかし企業というのは、放っておくと賃下げの方向にいきがちです。
会社と従業員では、従業員の方が立場が弱いからです。
このことは「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスが200年以上も前から指摘していることです。
アダム・スミスは「国富論」の中で、
「経営者は労働者の賃金を決めるにあたって有利な立場にある。しかし経営者は、労働者が家族を養える以上の賃金は必ず払わなくてはならない」
「労働の報酬が豊かになれば、子供の成育条件が改善され、人口は増える。そして、庶民の働く意欲が増進し、勤勉な人が増える」
と述べています(国富論第1編第8章)。
だから近代国家の政府は、企業に対して賃上げを働きかけこそすれ、賃下げを推奨するなどということは、絶対ありえないことだったのです。
近代の先進国において、政府が賃下げを推奨した事例というのは、おそらく小泉内閣時代の日本だけです。
それくらい愚かな政策だったのです。
その結果、今の日本は、韓国よりも平均給料が安くなってしまいました。
日本人の能力が韓国人よりも低いから賃金が下がったのではなく、日本政府が賃下げを推奨容認してきたから日本人の賃金が下がったのです。
そしてアダム・スミスが推奨した
「労働の報酬が豊かになれば、子供の成育条件が改善され、人口は増える。そして、庶民の働く意欲が増進し、勤勉な人が増える」
ということと真逆の方向に日本は行っているのです。竹中平蔵氏の責任は重大なものがあるでしょう。
また昨今、竹中平蔵氏は、「日本は中小企業が多すぎる」「日本の中小企業はもっと倒産すべき」などとも述べています。
この主張も、明らかな間違いがあります。
次回はそのことについて述べたいと思います。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年8月16日号より一部抜粋。全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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