日本も“対岸の火事”ではない。ブラジルの「旧Twitterサービス停止命令」という言論封殺が我が国に飛び火する日

 

スターリンク社の銀行口座まで凍結したブラジル最高裁

Xのオーナーであるイーロン・マスクは、少なくとも表向き「ツイッターを自由な言論空間にする」と宣言して旧ツイッターを買収しました。実際、買収直後には、第三者によるチームを作って米政府機関からの要請を受け入れた検閲の実態を調査した上で「ツイッターファイル」として公開し、検閲を廃止しました。また、トランプを始めとして、過去に凍結・排除された多くのアカウントを復活させています。一方で、X上では自身の問題発言も多く、「言論の自由を大義名分としてXを自分に都合のいい言論空間にしようとしているのではないか」という批判も受け続けています。

そのイーロン・マスクが、先月末、今度はブラジルの最高裁判所から同国でのXのサービス停止命令を受けました。X社とブラジル当局の攻防は今年の3月あたりから始まっていますが、きっかけは、当局がブラジルで人気の複数の反政府系アカウントや保守系アカウントを凍結するように要求してきたのに対してX社が拒否したことに端を発します。

ブラジル最高裁のアレクサンドル・デ・モラエス判事は、X社に対して、命令に従わないと巨額の制裁金を課したり、X社の弁護士を逮捕するなどと脅しをかけてきていたのですが、さらにはイーロン・マスクを刑事捜査の対象にするとも言っています。

これらの動きに対して、X社は同社のGlobal Government Affairsのアカウントに声明文を出し、「違法な命令に秘密裏に従うようなことはしない」と対決姿勢を鮮明にし、「今後、透明性の観点から、デ・モラエス判事の違法な要求と、それに関連するすべての法廷書類を公開する」としており、「ブラジルおよび世界中のユーザーの皆様へ、Xはあなたの言論の自由を守ることを約束します」とその声明文の最後で宣言しています。

イーロン・マスクのXアカウントを覗くと、デ・モラエス判事への批判や嘲笑、コラージュなどが溢れていますが、8月30日のポストでは「Alexandre de Moraes is an evil dictator cosplaying as a judge.(アレクサンドル・デ・モラエスは裁判官のコスプレをまとった悪の独裁者だ)」と言っています。

ちなみに、この動きはスターリンク社にも飛び火していて、デ・モラエス判事は「スターリンク社はX社に課した制裁金の責任を負うべきだ」としてスターリンク社の銀行口座まで凍結しています。

ブラジル最高裁判所の強引な動きに対しては、ブラジル市民の多くも怒っているようで、9月7日には大規模な抗議デモが予定されています。また、ブラジル議会でも150名ほどの議員がデ・モラエス判事の弾劾要求に署名しています。

ブラジルでは、昨年の選挙で大統領がボルソナロからルーラに交代しましたが、米国のバイデン政府が関与した不正選挙が行われたのではないかという噂もあって政治が混乱しています。11月の米国大統領選でトランプが大統領に復帰すれば、ブラジルでも何らかの政変が起きるかもしれません。

この記事の著者・辻野晃一郎さんのメルマガ

登録はコチラ

print
いま読まれてます

  • 日本も“対岸の火事”ではない。ブラジルの「旧Twitterサービス停止命令」という言論封殺が我が国に飛び火する日
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け