「我々は裏切られた」独裁者プーチンが、見捨てられたウクライナをNATOにとって“危険な隣国”に変貌させる

 

各国のリーダーが取る必要のある「覚悟をもった行動」

そのためには、欧米諸国のリソースと注意を危険なレベルまで消費させているイスラエル発の中東危機を治めることに本気で注力し、アメリカ政府も一旦、イスラエルのしりぬぐいとバックアップを完全に停止したうえで、8月頭にイランによる報復を思いとどまらせるために行った約束を、イスラエルを説き伏せて、実現させる必要があります。

ガザでの悲劇の停止と人道支援の即実施。レバノン情勢の安定化(即時停戦と、ヒズボラとイスラエルの対話の場づくり)アメリカ政府による厳格なイスラエルへの対応などが急ぎ必要となるでしょう。

注意すべきは、中東の問題の解決をアメリカが行ってはならないということです。アメリカはイスラエルに圧力をかけ、戦闘を終わらせるように強く迫ることに徹し、中東の和平の実現は、すでに仲介に携わっているエジプトやカタール、地域の雄を自任するサウジアラビア王国などに主導してもらい、その結末にアメリカも欧州も口出ししないという、これまでの慣習を覆す覚悟が必要なります。

そのミッションインポッシブルとも感じるオペレーションを通じて中東情勢を一旦治めたうえで、アメリカと欧州はウクライナへの支援を本格化し、今度はプーチン大統領の顔色を気にすることなく、同時にゼレンスキー大統領の行き過ぎた攻撃(ロシアへの越境攻撃など)を宥めたうえで、ロシアをロシアに押し戻すことにコミットする姿勢を示し、行動に移す必要があります。

このようなことを最近、ふとした縁でトランプ陣営の外交顧問と、ハリス陣営の外交顧問と話す機会がありましたが、「かなりハードルは高いが、その通りだろう」という反応が返ってきました。

そして両陣営曰く、1月まではバイデン政権が続き、残念ながら新しい政権ができるまでは、今の方向性が変わることは期待しづらいという認識をもっていると同時に、新政権下で早急にイスラエル対応とウクライナ対応を、覚悟を以て行わないと、国際情勢がコントロール不能になると同時に、アメリカの信頼と権威は地に落ちる危険性があるとの認識を明確に持っているとのことでした。

実際に来年1月以降、どうなるかは分かりませんし、それまで中東の緊張が爆発して、制御不能に陥っていないとも限りませんが、何とか非常にデリケートなバランスを保ちながら、綱渡りを続けて、破滅的な状況を防ぐのだろうと、個人的には感じています。

日本では石破新政権が発足しましたが、早速10月27日には総選挙を行うそうです。その選挙によって国民からの信託が与えられるまでは、恐らく国際情勢フロントでも何ら貢献できないのだろうと、残念に思いますが、その後はきっと日本外交ならではの、バランスを重視する外交術が発揮されるのだろうと期待しています。

「今こそ、停戦の時」

いろいろなリーダーがそう叫ぶのを耳にし、私も仲間たちも本当にその通りだと思うのですが、複雑に絡み合った利害と思いが混線するイスラエル絡みの中東紛争と、ロシアとウクライナの戦争、そして悲劇が拡大するスーダンの内戦などを本当に停戦に持ち込むには、声高に叫ぶだけでなく、ちょっとコストは生み出すかもしれませんが、覚悟をもった行動を早急にとる必要があると考えます。

以上、国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年10月4日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)

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