安倍氏は嘘をついていたのか?一時帰国の拉致被害者を「北朝鮮に戻さない」と決断した人物の名前

 

米政府からの遺骨再鑑定の申し出を断っていた安倍政権

こうして、めぐみの遺骨鑑定についての日本政府の出鱈目は、英国や米国からも批判される国際スキャンダルにまで発展したのだが、日本のメディアは、安倍やその支持勢力への忖度に徹し、この経緯をほとんど報じなかった。

さらに米政府は、このように日本が拉致問題で行き詰まり、それにこだわり続けていることが北の核開発をめぐる6カ国協議の進展をも阻害しつつあることを憂慮し、日本に対して「米国の最新技術で再鑑定するので、骨を渡しなさい」と申し出た。米国は2001年の9・11ワールド・トレード・センターへのテロ攻撃による3,000人近い犠牲者を瓦礫の中から発掘し、高温で焼け焦げになった骨からDNAを検出する技術を飛躍的に進歩させ、それにより従来は全く検出不能だったものでも50%程度まで鑑定できるようになっていた。

しかし日本側は、その最新技術でもしも遺骨が本物であることが判明すれば、安倍の首が吹き飛ぶ大事件となるため「骨はもう残っていない」と嘘をついてこの申し出を断ってしまった。

吉井は最初から「めぐみのものではない他の2種類のDNAが検出された」と言っていて、その場合、可能性は多分3つで……、

(1)骨は本物だったが、骨そのものから吉井の用いた方法ではDNAが検出できず、焼かれた後に別の誰かが触ったりしたため、その人のDNAが検出された。

(2)北の火葬場事情から、一緒に火葬された他人の骨が混じっていた。

(3)骨は最初から日本を欺こうとした偽物だった、

ということだろうが、この時、北側は交渉断絶に本当に困って、その打開のために懸命に努力していたわけで、(3)のように偽物を日本に提供しようとする動機がないので、この可能性はゼロと考えて良い。

ところが安倍は、応援団の1人である西岡力=モラロジー道徳教育財団教授が櫻井よしこ主宰「国家基本問題研究所」の「ろんだん」22年7月19日付への投稿によれば、吉井の一件の後、「今後は死亡の証拠を求めてはならない。そうすれば生きている被害者の腕などを切って本物の遺骨を作る危険性がある」と語ったという。どうすれば一体、これほどまでに禍々しい憎悪と不信が安倍の心の内から湧いて来るのだろうか。

外交のガの字もわからない単線思考で、嘘やデマゴギーや陰謀まがいの隠蔽工作まで弄して、この国をひたすら北朝鮮との対決に向かって追い込もうとしたのが安倍であり、死のために彼は拉致問題を利用しただけなのである。

この記事の著者・高野孟さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 安倍氏は嘘をついていたのか?一時帰国の拉致被害者を「北朝鮮に戻さない」と決断した人物の名前
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け