「大物工作員」が語る北朝鮮に嘘をつく理由がない訳
付け加えると、『新潮45』2013年9月号に「『大物工作員』と呼ばれた男の告白/北朝鮮と私」の連載第1回「拉致交渉」が載った。大物工作員というのは大袈裟で、吉田猛は長年に渡り日朝貿易に携わる貿易会社の社長で、かつて拉致議連事務局長だった平沢勝栄などと組んで両国の間で立ち働いた。その彼が言うには……、
▼5人が一時帰国した時は安倍官房副長官ですが、返したら二度と帰ってこないと言っていた。でもそんなバカなことはないんです。なぜかと言うと、北朝鮮は日本と関係改善をしたくて拉致を認めた。それはつまり経済援助をしてもらいたいということです。それに拉致被害者もその管理が大変だから、もう帰したがっていたわけですよ。
▼横田めぐみさんの骨が戻ってきて、それが他人の骨と鑑定されて、また関係は悪化してしまう。私は拉致問題に関し、平壌はある程度正直に言ったと思っている。拉致して生きている人たちはみんな帰してしまったのじゃないか。政府が最初に調査を要請した人たちで戻ってこなかった方々は、みんな亡くなっていると思います。
▼拉致を認めて謝罪する、そして関係改善するということで上から指示が来ている中で、あの国で調査して嘘をついたら大変なことになりますよ。国家反逆罪です。だからその時点で知りうる限りのことを出したんじゃないか。めぐみさんについては、キム・ヘギョンちゃんの父・金英男さんがヘギョンちゃんと今の奥さんを連れてきた。それを見た時、気の毒なことですが、もうめぐみさんは生きてはいない、と思いました。
▼横田めぐみさんの骨を返すときに、再度、調べているんです。拉致被害者が住んでいた各地の招待所の管理人に平壌に集まってもらって、聞き取り調査した。清津の招待所とか元山の招待所とか。骨を見つけるのは大変です。だいたい北朝鮮は土葬の国です。火葬場はチェコ製のものが東平壌にあるほか、何カ所かはある。でも燃料がないからまとめて焼くらしい。日本みたいに一人ひとり丁寧にはやらない。横田めぐみさんの遺骨もそうなのかは知りませんが、2度焼きしてあったという。あれじゃDNA鑑定ができないと英国の『ネイチャー』誌が言っているわけで、骨があってもはっきりさせるのは難しいんじゃないでしょうか……。
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