一瞬にして崩壊することになる金正恩の甘い夢
ところで“大きな賭け”という点では、ロシアからの支援と引き換えに、ウクライナ戦線に自国兵を送り込んだ北朝鮮および金正恩氏にとっても、自身の存在と統治を根本から危険に曝す状況が生まれています。
今回のウクライナ戦線への北朝鮮兵の派遣については、一切国内では報道されていないようですが、今週の初交戦でそれなりの犠牲が出たという情報があり、それが北朝鮮国内で知られるようになった場合、その犠牲を説明しうるだけの材料があるとは思えず、場合によっては金王朝の終焉に繋がるような反抗が起こる可能性も否定できないという分析が、多方面から寄せられています。
それに中国が絡むのか?韓国が何らかの工作を行うのか?それともロシアの裏切りがあるのか?
方法は分かりませんが、不都合な真実が北朝鮮内で知られることになった場合には、いくら恐怖による統制を強いても、体制の正統性を守ることは困難になり、一気に崩壊の危機に晒されることになりかねません。
そうした場合、北朝鮮の金正恩氏としては、ロシアとの密接な関係を築き、プーチン大統領に恩を売ることで、体制の存続が安泰になり…という甘い夢は、一瞬にして崩壊することになります。
そのような場合に得をするのは誰でしょうか?韓国ではなく、恐らく中国とロシアでしょうが、その詳細については、今回は触れないでおこうと思います。
ウクライナ戦争停戦は国際社会に安定を取り戻すきっかけになるか
話を元に戻すと、仮にプーチン大統領の思惑がぴたりとはまり、トランプ大統領の助けを得て停戦に持ち込み、一旦、戦争を棚上げにできたとして、それは国際社会に安定を取り戻すきっかけになるかと言えば、きっとそうはなりません。
トランプ大統領とプーチン大統領の間の密約で停戦が成立した場合、ウクライナの領土の一部が恒久的にロシア領となり、かつこの先しばらくの間、ウクライナはNATOには加入できないという条件も付けられることで、実質的にウクライナは欧米諸国から見捨てられ、今回の侵攻のほとぼりが冷めたら、ロシアによって蹂躙されることになりかねません。
そうなると、バルト三国やポーランドなど次のターゲットにされかねない国々がロシアを取り囲んで臨戦状態に置かれることになり、いかなる対ロ行動も今度はNATOによるロシアへの明白なaggressionというとてもおいしい口実をロシアに与えることに繋がるため、コーカサス地方は一気に戦火に見舞われることになります。
仮にその地域を巻き込んだ大戦争がすぐには起きなくても、地域は引き続き緊迫した状況に置かれ続けるため、「ウクライナの問題が解決したら、次は中東問題の解決だ」と考える国際社会の思惑は外れることになりかねません――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年11月15日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)
この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ
image by: Presidential Press and Information Office, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons









