11月17日投開票の兵庫知事選で、前尼崎市長の稲村和美候補を激しく追い上げている斎藤元彦候補。パワハラ・おねだり疑惑の逆風をものともしない「斎藤ブーム」はどこまで本物なのか?
選挙戦最終盤 パワハラ元知事・斎藤元彦氏が“猛追”の怪
11月17日投開票の兵庫県知事選挙は選挙戦最終盤に入り、失職した元知事の斎藤元彦氏(47)が、前尼崎市長の稲村和美氏(52)を激しく追い上げる意外な展開となっている。
選挙戦序盤は稲村氏の楽勝ムード。斎藤氏の疑惑の数々を考えれば当然だろう。だが斎藤陣営はネットをフル活用して「パワハラやおねだり疑惑はデマ」「既得権益と戦って罠にはめられた悲劇の元知事」といったイメージを拡散しつづけた。
すると、当初は閑古鳥が鳴いていた斎藤氏の街宣に聴衆が集まりはじめた。やがて街頭に“斎藤コール”が響き渡るようになると、その様子はYouTubeでライブ配信され、口コミはSNSで再拡散され、「斎藤元彦ブーム」はさらに加速していった。一部メディアが「斎藤氏が逆転か」と持ち上げているが、それもまったくの絵空事とは言えないほどの勢いが感じられるのはたしかだ。
一方、このような状況への危機感から、兵庫県内22人の市長は「市長会有志」として14日、県庁で会見を開き、知事選で稲村氏を支持すると表明した。異例となる支持表明の背景には、対立する斎藤陣営がSNSなどで行っているとされる誹謗中傷やデマ拡散への強い懸念がある。
兵庫県の有権者からは、選挙前最後の金曜日にも関わらず「え?斎藤さんのパワハラはウソだったってこと?」「いや、その情報はやっぱりデマらしい」「もう何が本当なのかわからない」など混乱の声が多数聞かれる。
仕掛け人・立花孝志氏は兵庫県民に重大なウソをついている!?
混沌とする兵庫県知事選において、いったい誰が言っていることを信じればいいのだろうか?有権者が知っておくべき重要な判断材料は、少なくとも2つあるという。
「まず第一に、『斎藤元彦ブーム』の仕掛け人たる立花孝志さんの具体的な主張内容と、その正誤を知るのが大切です。立花さんが発信する“真相”や“内部資料”は、センセーショナルでわかりやすいのが特徴ですが、常に『わかりやすい=正しい』とはかぎりません。もし、立花さんがウソをついていたとなれば、斎藤元彦ブーム全体もウソまみれの虚構という判断ができるわけです」(政界ウォッチャー)
NHK党党首の立花孝志氏(57)は、自身の当選を目指さず、斎藤氏の選挙戦をサポートするために兵庫県知事選に立候補した。街頭演説やSNSを通じて「既得権益 vs 斎藤知事」「真実を知るSNS・新興ネットメディア vs 斎藤知事を攻撃するTV・新聞などのオールドメディア」といった“わかりやすい”対立構図を強調し、短期間で斎藤氏を“悲劇のヒーロー”に仕立て上げた立役者だ。
「ですが、その“わかりやすさ”には大きな危険が潜んでいました。今まさに、斎藤氏のパワハラ・おねだりから、元県民局長が命を絶った理由まで、多くの重要ポイントに関して、立花氏がウソをついていたとの重大疑義が生じているんです」(前出の政界ウォッチャー)
「立花氏のウソ」を暴くネット発のコンテンツとして、いま注目されているのが、YouTuberベレティ・フォロシフィー氏の動画「【立花孝志】第2弾 立花の嘘、デマ、憶測を事実と照らし合わせます【斎藤元彦】」だという。
全編18分39秒とやや長いが、表面上の“わかりやすさ”に逃げることなく主要論点が網羅されている。論旨が明快なので、ながら見の倍速再生でも十分に理解できる内容だ。読者には、ぜひ動画をご覧になることをオススメするが、ポイントの一部を箇条書きにすると次のとおり。
- 立花氏が「片山元副知事から聞いた、もらった」とする情報や資料はすべてウソだった(立花氏は元副知事と面識が一切ない)
- 「自死した局長は10年で10人以上と不倫していた」「性犯罪も犯した」は何ら根拠のない憶測だった(立花氏は「証拠つきで説明した」と主張するも、そのような事実は一切ない)
- 仮に局長が不倫していたとしても、斎藤氏への内部告発とはまったく関係がない話である
- 立花氏は県民局長が自死した理由を不倫や性犯罪を苦にしたものとしているが、遺書には「一死をもって抗議をする」旨が記載されており、事実とまったく異なる
- 立花氏は「斎藤氏のパワハラやおねだりはなかった」と主張しているが、斎藤氏本人は非を認めて県職員に謝罪をしており、事実とまったく異なる
いずれも「斎藤元彦ブーム」を加速させてきた“衝撃の真相”ばかりだ。これらが実際にはすべてデマだったというのだから驚かされる。立花氏はどう反論するのか?あるいは無視を決め込むのだろうか。
ついに立花氏のウソに同調しはじめた斎藤氏
この立花氏と斎藤氏は面識がなく、直接会って話したことはない、ということになっている。「義憤に駆られた立花氏が、斎藤氏を勝手に応援しているだけ」という体裁がとられてきた。
だが、斎藤氏の最近の街頭演説では「パワハラはなかった」など、立花氏の主張に完全にシンクロする言葉が飛び出すようになった。これに快哉を叫ぶ聴衆は、自分がデマのシャワーを浴び、斎藤氏を“悲劇のヒーロー”扱いするという黒歴史に片足をつっこんでいることに、いまだ気づいていない様子だ。