3.トランプ大統領による政策転換
現段階で、トランプ次期大統領は、中国とは対立姿勢を明確にし、ロシアとは関係改善を行うのではないか、と見られている。
また、大統領就任後、直ちにロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争等を停戦させるとしている。つまり、ウクライナ支援、NATO支援を打ち切る方向だ。
長期的には、海外の米軍基地は縮小し、同盟国の自主防衛を進めるのだろう。
現在までの米国民主党政権の政策からは大転換となる。日本政府は、バイデン大統領の政策を全面的に支持し、ウクライナ支援を継続すると表明した。これは、トランプ大統領の政策に反している。
トランプ大統領は、中国政府を関税で締め上げ、日本政府に対しても、より厳しい対中政策を求めるだろう。親中議員は戦略的に排除されるかもしれない。
反面、トランプ大統領がロシアとの関係を修復し、同盟国である日本とドイツにも対ロ関係の修復を認めるなら、日独両国の安全保障とエネルギー問題は大きく改善するに違いない。しかし、米国はシェエールオイルの採掘を再開すると言っているので、日独両国に米国産の石油を押し付けるかもしれない。
中国は大変な時代を迎えるが、習近平体制が終わり、台湾侵攻を諦めれば、中国経済も再起動できるだろう。
4.保護主義時代のモノづくり
トランプ大統領の政策は、米国第一主義であり、米国建国時の自立した米国を取り戻そうというものだ。そして、米国経済を阻害する国には関税を掛けるという保護主義だ。
関税は、自由貿易体制に反する。各国の国内産業は保護されるが、新興国の高度成長は失われる。世界全体を見れば、経済のダイナミズムが失われるだろう。貧富の差は拡大しないが、固定される。
また、グローバリズム時代とは異なる棲み分けが起きる可能性もある。例えば、完全な独占商品には関税を掛ける意味はない。生産者が自由に価格を決定できるからだ。また、圧倒的な価格競争力を持つ製品に関税を掛けても、国内企業が育成するわけではない。関税が機能するのは価格だけ。つまり、低コスト商品が対象だ。しかし、供給過剰が崩れ、供給不足が起きれば関税は意味をなさない。
コストダウンを競うより、真似のできない技術を磨くこと。つまり、オンリーワンの商品を目指すことだ。
米国が保護主義になるのは良いが、それが他国への干渉につながると恐ろしい。現在の中国政府のように、特許や技術を公開しないと輸入禁止にすると言われれば、輸出できない。また、トランプ氏の次の政権がどうなるかの保証もない。
いずれにせよ、米国が保護主義になれば、供給過剰は沈静化するだろう。
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