困難な立場に置かれること必至のゼレンスキー大統領
しかし、いろいろな状況を見て、統計を眺めると、「果たしてこれがいつまで持続するかな?」という懸念が大きくなってきます。
プーチン大統領とロシアがウクライナに侵攻する前までは、ドイツやトルコ、その他の国々はロシアがパイプラインで直接送る原油や天然ガスに依存していたため、ロシアが欧州各国および周辺国のインフラと、言ってしまえば、それらの国々の内政さえも握っていたのですが、ウクライナ侵攻を受けてそれらのコントロールラインを失い、代わりにロシアの余剰の原油と天然ガスを、市場価格よりもはるかに安価で受け入れることを選んだ中国とインドに、ロシアの持続性の命運を握られるという事態になっています。
ロシア帝国の再興を夢見て、そして新しいソビエト連邦の主となることを夢見て、ウクライナ侵攻を強行したともいえる中、実際にはウクライナ侵攻には失敗し、皇帝として再び世界の超大国に君臨する代わりに、これまで下に見てきた各国の首脳に笑顔で頭を下げ続ける状況に変わってきています。
シリアのアサド大統領を受け入れたことは、ロシア国内では「プーチン大統領の良心」として評価されているものの、それはシリアを助けることが出来なかった罪滅ぼしという見方もでき、確実にロシアおよびプーチン大統領の威光の衰えと取ることもできるかもしれません。
ロシアの勢力拡大のために、アフリカ大陸への足掛かりとして大事にしてきたシリアを失い、イランも不安定な状態に置かれていることで、プーチン大統領にとっての“世界帝国再興のための駒”が弱体化し、かつての下僕だったはずのスタン系の国々もロシアと距離を取っていることから、国際社会においては、長期的に行き詰まりの傾向が目立ってきています。
それをプーチン大統領自身も十分に認識していると思われますが、表面的にはまだまだ強気を崩していません。
それは来るべきトランプ大統領との折衝に向けて、いろいろと策を練るためには、強く見せておく必要があるからでしょう。
トランプ氏の「大統領就任から24時間以内に停戦」という内容を鵜呑みにはしていないにせよ、恐らく一つのチャンスととらえているのではないかと考えられます。
「トランプ氏はウクライナによるロシアへの攻撃を評価していない」
「彼は私と直接話せる関係であることを豪語している」
「停戦合意を自身の成果としてアピールすることを願っており、それを実現することに同意すれば、ロシアに不利な条件は出さない」
「何よりも、息子が権益を持っていたバイデンと違い、トランプ氏はウクライナにさほど関心がない」
「いろいろな情報筋から聞く限り、ロシアがこれまでにとった地域はロシアに帰属させ、ウクライナとロシアの間に緩衝地帯を置くと言っている」
「ウクライナのNATO入りにも前向きではない」
トランプ氏がこれまでに発言したり、周辺が発言したりした内容を踏まえ、100点満点の回答は得られなくても、トランプ氏の誘いに乗って停戦協議のテーブルに、ロシアから積極的に就くことは決して悪いことにはならず、またロシアの、そして自身の面子も守ることが出来る、とプーチン大統領は考えているように見えます。
逆にゼレンスキー大統領にとってはこの停戦協議は歓迎できないものでしょうし、もともとゴールを非常に高く、ほぼ実現不可能なレベルにまで上げてしまっていることもあり、トランプ氏からの圧力がかかった際には、非常に困難な立場に置かれることは必至です。
すでに国内でも支持を失いつつあり、諸国からも見放され…。ウクライナを守るためには大統領の座を降りるか、トランプ采配に従うしかないと思われますが、実際にはどのような結末が待っているでしょうか?
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