バイデン政権の「対中政策」は本当に成功したのか?2024年の中国外交を振り返る

 

冒頭の話題に戻せば、王毅がアメリカとの交渉の場で毎回同じことを繰り返すと語ったのは、2つの点から腑に落ちる。

一つはアメリカの言行不一致。もう一つは中国外交の一貫性という意味だ。

前者は、米中首脳会談の度にバイデンが繰り返した「同盟関係の強化を通じた中国への対抗を図らず」という発言が実行されないことへの中国側の不満だ。

後者は習近平がリマの米中首脳会談で語った「相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィンに照らして中米関係を取り扱うという原則に変更はない」という念仏のように繰り返される中国の主張だ。

中国が外交の場で退屈なほど同じ文言を繰り返すのは、まさに一貫性の証明でもある。

こうした中国外交にあって、今年の大きな成果とされているのが、「人類運命共同体」という言葉を多くの国との首脳会談後の共同声明に入れ込むことに成功したことだ。

対外政策で「人類運命共同体」を具現化する道具として駆使されたのが「一帯一路」である。

10月のペルーのチャンカイ港の開発は典型例だ。開港式ではペルーのディナ・ボルアルテ大統領が習近平と並んでオンライン参加するという熱の入れようだった。

中国の「人類運命共同体」と「一帯一路」を軸とした外交の裏にあるテーマは、「対立より発展」だ。

インド、ASEAN、アフリカ、中南米の多くの国が中国との距離を縮めているのは、「対立より発展」という中国の姿勢との親和性のためだ。

トランプの再登板で揺れる世界で日本がどんな選択をするのか。アメリカに従い120億ドルのウクライナ支援を約束し、実行してきた日本の決算はどうなのか。

はたしてバイデン外交は日本に追い風を吹かせた4年間だったのか。真剣に総括する必要があるはずだ。

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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