昨年は回線契約数が伸びて順調な楽天モバイルですが、今年はどこまで契約数を伸ばすことができるのでしょうか。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』ではケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、楽天の三木谷会長が出した「年頭挨拶」を読み解きながら、今後の楽天モバイルの動きと業績を予想しています。
楽天グループ・三木谷 浩史会長兼社長「年頭挨拶」—-楽天モバイルはどこまで契約者数を増やせるのか
昨年、楽天グループは様々な分野でいくつもの成果を達成することができました。インターネットサービス事業では年間国内EC流通総額が6兆円規模で堅調に推移し、フィンテックサービス事業では、楽天カードのショッピング取扱高が第3四半期において四半期初の6兆円を達成したほか、2024年9月に楽天銀行単体口座数が1619万を突破、楽天証券総合口座数が1165万口座を突破しました。ヴィッセル神戸がJ1リーグ2連覇を達成するという嬉しい成果もありました。
楽天モバイルにおいては、昨年はプラチナバンド(700MHz帯)での商用サービスを開始するとともに、全契約回線数が830万回線を突破しました。また、法人向けにも、様々なニーズにお応えするソリューションを拡充してきています。日本の物価全体が高まる中、通信費の低減に大きく貢献してきており、今後も、品質高く、無制限で、お手頃な値段でご利用いただけるように全力で取り組んでまいります。
とりわけモバイルでの挑戦により、楽天グループにおけるEコマース・フィンテックを含めた楽天エコシステムは加速度的に拡大しています。年間グローバル流通総額は44兆円規模、グローバルメンバーシップも約19億人となったほか、第3四半期において5年ぶりとなる営業利益四半期黒字化を達成しました。
世界は、インターネット、スマートフォン、クラウド、AIの4つの革命によって、実物経済や金融経済が仮想ネットワーク・大規模データセンターから成る「仮想経済」の上に成立する経済構造へと変化してきています。さらなる成長に向けて、私たちはこうした社会変革に一層適応していく必要があります。
楽天グループでは、世界中のあらゆる人々がAIを活用できるようにする「AIの民主化」を目指しています。その中で、マーケティング・オペレーション等の効率化や顧客体験向上を促進する楽天独自の技術基盤・AIソリューション「Rakuten AI」も始動させています。今後、最先端のAIソリューションを駆使することで、自社の業務効率や顧客体験の向上だけでなく、パートナー様の企業活動にも貢献していきたいと考えております。
楽天グループはこれからも、あらゆる領域で挑戦し続けることで、日本、そして世界の人々と社会をエンパワーメントすることに取り組んでまいります。
以 上
■「年頭挨拶」を読んで(石川温)
回線契約数が830万を突破するなど順調な楽天モバイル。プラチナバンドも獲得、サービスインして、顧客獲得に拍車がかかっている感がある。
個人的に期待したいのは、楽天モバイルが「やりたい」と総務省にお願いしていた「お試し割」。実際、どのような立て付けで、他社ユーザーに「お試ししてもらうか」が興味深い。楽天モバイルが動けば、他社も対抗せざるを得ないわけで、顧客獲得競争はどうなっていくのか。
社債の償還は、とりあえず2025年も目処がついているものの、2026年以降、安定した経営をして行くには今年、楽天モバイルのさらなる収益改善が不可欠。ARPUの爆発的な向上は難しいだけに、いかに顧客基盤を拡大するかが重要になりそう。
ただ、一方で、データ利用量の多いユーザーが殺到すれば、ネットワーク品質にも影響を与える。追加の設備投資も必要になってくるだけに、そのあたりの舵取りが難しくなりそうだ。
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image by: Guillaume Paumier, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons