銀行から借入しない無借金経営といえば聞こえはいいですが、実は裏では放蕩経営だった…というパターンも多く存在します。メルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』著者である吉田さんは、破産した予備校「ニチガク」について語りながら、銀行借入の意外なメリットについて紹介しています。
「銀行から借りない経営」の弊害
無借金経営というと大変立派なイメージがありますが、弊害もあると思います。
特に中小零細企業は、会計監査がつくわけでもないし有能なブレーンがいるとも限らないので、下手をすれば、誰からも決算書の内容を指摘されることもなく、ザルのような会計、放漫経営になりかねません。
前号で学習塾「ニチガク」について取り上げましたが、その後、実態がより明らかになってきました。やはり想像していたとおり、銀行借入ゼロで、場当たり的な経営でした。以下、やや長いですが東京商工リサーチのニュースより引用します。
大学受験のニチガク、旧態依然の営業手法と不適切会計
大手受検予備校「ニチガク」を運営する(株)日本学力振興会(TSR企業コード:293847398、新宿区)が1月4日に突然教室を閉鎖してから3週間が経過した。
1月10日に東京地裁へ破産を申請したが、受験シーズンを目前に控えたタイミングの事業断念は受験生に動揺が広がった。
東京商工リサーチ(TSR)が独自に入手した破産申立書には、生徒獲得に苦戦した背景や不適切会計の可能性などが記されている。
申立書の破産経緯は以下の通り(要旨)。
ニチガクは生徒募集を関係会社に委託していた(以下、委託会社)。
委託会社は、生徒自宅に一軒一軒電話をかけて勧誘し、最盛期には月間4000万円を超える売上高をあげた。
入学金や授業料は、ニチガクと委託会社が一定割合で折半していた。
しかし、携帯電話が普及すると固定電話のある家庭が減少し、従来の勧誘が難しくなり、生徒数が減少。
コロナ禍では緊急事態宣言の影響もあり、対面授業ができず、自習室の利用も制限せざるを得なくなった。
このため、急激に生徒が減少(破産申請の時点で約130人)し、売上高は月間500万円まで落ち込んだ。
これに伴い。給料遅配や税金滞納が慢性化した。
創業者は金融機関からの借入に頼らず、自力で乗り切る方針だったが、2022年10月頃、旧知のA氏に経営を一任し、経営から身を引いた。A氏は電話勧誘を見直し、医学部受験の新設などで立て直しを図ったが、医学部受験用の自習室の確保や高額な講師料などが経営を圧迫した。
打つ手がなくなったA氏は2024年10月、事情に精通していたB氏に経営を委ねた。
それでも給与などを支払うメドが立たなかった。
今年1月4日、校舎入り口に事業停止の張り紙を掲げると現場で混乱が生じ、マスコミやSNSで騒動となり、破産申請に至った。
不適切会計と給与未払い
破産経緯とは別の申立資料によると、ニチガクは委託会社との間で決算の帳尻を合わせる不適切な会計処理に手を染めていたようだ。
2023年11月期の決算書の債務超過額は1億円を超え、現預金はわずか25万円とどまる。
ニチガクは、給与未払いによって経理スタッフが退職し、正確な直近の債権債務額が把握できていない。
2024年11月期の決算書も作成できておらず、債権者や負債の額が確定するには時間が必要で、桜の花が散っても混乱は続きそうだ。引用元: https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200875_1527.html
この記事の著者・吉田猫次郎さんのメルマガ