古今東西の一流アートを一緒に楽しむ
美しいと感じられることがひとつでも多いこと、いわば「情的向美心」が豊かなことが、これからは大切になります。それが、幸せな人生を送る条件でもあり、AI時代に求められる人材になれる条件だと考えています。
それには、現代の東京で暮らすことほど有利なことはありません。ピカソから北斎まで、ジブリからバッハまで、毎日、あらゆるところで古今東西の一流アートに接する機会が用意されているからです。
それなのに、大学の教え子に尋ねると、美術館やコンサートに通う習慣がないどころか、行ったこともない学生が多いことに驚き、もったいなくて悲しくなります。
美術館・博物館・庭園などは、こどもが無料のところも多いですし、私も愛用する「ぐるっとパス」を使えば、月々1,000円ちょっとで、首都圏の100以上のアート施設が入場無料か割引になるのです。こんな、子育て&自分育ての楽園ともいうべき好環境を生かしていないのは残念です。
同様に、オーケストラの定期会員や学生券を使えば、映画館に行くような値段で、フルオーケストラの生演奏を楽しめます。昔から、貴族や上流階級しか味わえなかった感動が、誰でも味わえる時代になったのです。それなのに、満席となるコンサートが少ないことや、若者が来ていないことはとても悲しいことです。
これら一流のアートは、ディスプレイやイヤホンで触れても本当の良さはわかりません。ぜひ親子して生で一緒に本物に触れてほしいのです。
もしもご自身がこうしたアートを楽しむ習慣が無かったとしたら、それこそチャンスです。親子して、新鮮な目で、これまで知らなかった美に触れることができるはずです。
スマホやパソコンを与える前に、自然の中で親子して遊ぶ
認知科学者の豊田さん曰く、親しい内外の脳やコンピュータの専門家ほど、幼い子供には、スマホやパソコンを与えず、野山で遊ばせることを実践しているそうです。
どんな高精細なディスプレイやVRゴーグルを使おうが、近くの公園を散歩する方が、より多彩で豊富な、しかも1/fゆらぎのある情報に、刻一刻と接せることができるのです。散歩中に体を気持ちよく動かしながら、例えば風に草木がそよぐ様を無意識に見聞きしている方が、脳の中で起きていることはより複雑で充実しているそうです。
だとしたら話は簡単です。まずは近所の公園に通い、時には近郊の大きな公園、山や川、湖や海に出かけて、思い切り身体を動かして遊べばよいのです。
快適なリゾートホテルに泊まるより、ちょっと不便なキャンプをした方が、子供にとっては良い学びになるのです。
要は、昨今ファミレスなどでありがちな風景=親子してそれぞれ自分のスマホをのぞき込んでいる(残念ながら子供たちが成人した今のわが家の状況でもありますが)=の真逆をやればよいのです。
残念ながら、時代は、小学校ではパソコンに触れさせ、親の事情もあって幼い子にもスマホを持たせることを要求しています。
もちろん、中高生になればITリテラシーも必要になりますが、大人になれば好き放題、パソコンやスマホを使えばよいのですが、少なくとも小学生の間は、スマホやパソコンより楽しいことを教えてあげるのが、親の責務だと思うのです。
というわけで、私の3つの提案は、世間で言われていることとは逆行した古臭い回答になってしまったかもしれません。
しかし、親子仲良く新しいお稽古を始め、見たことのない一流アートに感動し、野山で何も考えずに体を動かすことが、結果として子供の感性や人間力を最も高めるとしたら、こんなに楽で楽しいことは無いと思いませんか?
子供のためといいながら、実は、人生百年時代を楽しむ両親のためにもなります。これからの新しい人生の楽しみ方の新発見や再発見にもなるからです。
ぜひ、子育てを好機に、親子して肩の力を抜いてリラックスできる環境で、いわば「感じ直し」や「学び直し」を楽しまれてはいかがでしょう。
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