タイミングは最悪。石破首相が焦ってトランプと会っても「墓穴を掘るだけ」に終わりそうな理由

 

「考えられないような無茶」を実行してくる第2次トランプ政権

更に、ワシントンDCにおける航空機と陸軍ヘリの衝突墜落事故では、一夜明けた事故直後の時点で、トランプ大統領は、ヴァンス副大統領、ヘゲセス国防長官などを伴ってアドリブ会見に臨みました。そこでトランプ氏は、全員の絶望を宣告しながら証拠もないままに民主党に責任を転嫁して騒動になっています。

例えば、前政権のブティジェージ運輸長官について、多様性重視をやって「ベスト・アンド・ブライテスト」つまりエリート中のエリートを選抜すべき航空管制官の職に、「少数者」を優先して配属したなどと激しく批判していました。まるで、事故の原因が管制ミスであり、管制官が実力以外の評価を受けて採用されたのが遠因だとしたのです。

また、ヘゲセス国防長官は陸軍ヘリのミスを認めるようなことも言っていました。これも事故調の作業が動き出す前の断定です。操縦していたのが女性兵士ということから、かねてからの長官の持論である「女性は戦闘現場から外す」という意味不明の「保守思想」を実現するために事故を利用しているとしか思えません。

いくら「トランプ劇場」とはいえ、これはいくらなんでも「トンデモ」だと思うのですが、リベラル的な風潮や政策に疲れた米国世論は全面批判には回らないだろう、というような計算の上の行動のようです。そんな中で、今週週明けの最大のテーマは、既に別の話題に変わっています。対中国、カナダ、メキシコの関税問題で週明けの市場も社会も大混乱に陥っているのです。

まず、中国については、最初は関税60%と言っていました。ですが、就任式に韓正国家副主席が来たこともあり、水面下で折衝がされて今は10%ということになっています。一方で、メキシコとカナダについては、2月に入ると同時に「25%関税」で決定などという話が出てきて、大統領の署名したということになり、パニックが起きました。3日(月)の週明けは、株価は暴落していたのです。

そうではあるのですが、強硬な言葉の裏には現実的な柔軟性も控えているように見えていたのは事実で、案の定、朝令暮改の動きとなっています。まず、メキシコのシェインバウム大統領とは、トランプ氏は電話会談をやって「いい感じで合意」がされたとして、突然「関税は1ヶ月延期」になりました。

その一方で、カナダでは「アメリカのウィスキー(バーボンなど)の不買運動」などが起きており、かなり険悪な雰囲気となっていました。ですが、本稿の時点ではトルドー首相とトランプ氏の直接会談の結果、メキシコ同様に関税は先送りになったそうです。

とにかく、激しい言葉と激しい政策が飛び交う中で、強硬姿勢と柔軟姿勢が錯綜しています。今回の「第2次トランプ政権」に関しては、前回とは色々な点が異なるわけですが、良く言われていたのが「議会が共和党でやりやすい」「本人と周辺が連邦政府の仕組みを理解しているのでやりやすい」という説です。

確かにそうなのですが、そうした条件を上回るような勢いで「考えられないような無茶」を実行してくるので、今回は8年前の前回よりも更に激しい混乱が起きているようにも思えます。

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