国家の威信を示すため会談の席で行うべき2つの提案
2点提案したいと思います。1つは、トランプ内閣の情報長官についてです。元下院議員でその前は軍にいたトリシ・ギャバード氏という人物がCIA、NSA、各軍の情報局を束ねる情報長官に就任の見込みです。恐らく2月4日の上院情報委員会で指名されて、本会議に回り、最悪でも50対50で副大統領のタイブレーク票で就任ということになると言われています。
問題は、彼女は意味不明の反日言動を繰り返していることです。以前は「日本の防衛費倍増は、ハワイ侵略の兆候」などと言っており、最近では「日本の軍事大国化は中国との緊張を激化する」ということも言っています。岸田政権が防衛費倍増に踏み切ったのは、外でもないトランプ氏が火をつけた「軍事費の負担増要求」に屈したからです。それを「軍事大国化」などと悪口を言われては、日本としては政府も世論も我慢の限界ということになります。
ですが、彼女をクビにせよというのは、現在の日本の小さくなったプレゼンスを前提としますと、残念ながら最善手ではありません。そこで、初回の日本での「2+2」協議、つまり「外相+防衛相」の会談の際に彼女に来てもらうよう要請するのです。その上で、自衛隊がいかに米軍と緊密に活動しているか、また防衛費の増額は軍事大国化では全くないし、増額分はそのまま米国の負担減と相殺されて抑止力維持を行う、これを現場で見てもらうのです。
その際には、当然ギャバード氏を日本は歓迎するし、仮にルビオ国務長官、ヘゲシス国防長官とともに、彼女が訪日してくれればこれ以上の名誉はない、そのぐらいのお世辞は言うだけならタダだと思います。このストーリーを大統領に理解してもらい、実行を確約してもらうのです。
もう1つは、トランプ大統領をトヨタのケンタッキー工場に招待して視察してもらうことです。そこで、日本が高級車の高度な生産技術をオープンに移転していることをアピールするのです。例えばテスラの正反対の方法論として、同じラインに多数の車種を流すとか、多能工を訓練してモチベーションと効率を追及するなどの製造技術についてです。
何よりも巨大な米国雇用、米国経済に貢献している姿を感じてもらい、日本の自動車産業は米国経済の脅威とは正反対だということを改めて認識してもらうべきです。また、現状ではトランプ氏の言う「きれいな空気という意味での環境対策」と効率という点から、ハイブリッドが優秀だということもアピールして、評価してもらうのです。
その上で、トヨタや日産などとの調整が間に合うようなら、改めて追加の対米投資、あるいは日墨関係や日加関係を損なわない範囲での、工場の米国移転などの「お土産」も持ち帰ってもらうことも考えたらいいと思います。とにかく、ここまで大規模な自動車の現地生産というのは、日本本国に貧困をバラまく遠因とも言えるわけで、本来は間違った政策とも思います。ですが、そこまで血を流してやっていることを、少なくとも評価してもらいたいという胸の張り方はあっていいと思います。
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