トランプもプーチンも完全無視。国際安全保障確立の舞台で蚊帳の外に置かれてしまった「国連」の惨状が意味するもの

 

ウクライナが敗戦国であるかのように進められる停戦協議

アメリカにとっては(そしてロシアにとっても)、それは「2大国である米ロがまず国際秩序の観点から話し合い、分断した世界に秩序を取り戻すことが先決で、そのためにまず米ロで落としどころを探る」ということを意味し、ロシアとの交渉のバランスを取るには、アメリカはウクライナへの軍事支援を継続することが大事だが、そのためには担保としてウクライナのレアアースからの権益を、支援と引き換えに譲らないといけない、ということに、アメリカとウクライナが合意しなくてはならない、というロジックだと考えます。

しかし、ウクライナにとっては、アメリカおよびNATOによるウクライナの安全保障の確約、つまり二度とロシアに自国の領土を蹂躙されないことへの保証がないと、戦後の話をすることはできないし、ましてや「自国の重要な収入源であり、戦後復興の原資となり得るレアアースの権益を渡すなどということは到底約束できない」というのが筋であるという一線を明確にするのが、米・ウクライナ間の“外交的な解決”の条件でしょう。

ただ、その外交的解決なるものを議論するにあたり、ウクライナはロシアに侵略されている当事者であるにもかかわらず、停戦に向けた条件を含む全体の枠組みを話し合う場には呼ばれておらず、米ロ間で勝手に進められる状況に大きな危機感を抱き、調停グループのメンバーの表現を借りると、「恐怖さえ感じている」ようです。

「外交的解決を目指す」というのは聞こえもよく、好ましい調停の形とされることが多いですが、それは当事者すべてがequal standingで話し合いに臨むことが大前提であり、まだ交戦中にどちらかの降伏という状況が起こらない限りは、一方的な結果を押し付けられることはないというのが“共通理解”のはずです。

しかし、ウクライナ問題に関する“外交的解決”のやり方を見ていると、あたかもウクライナが敗戦国であるかのような前提で進められ、その行動を戒め、“望ましい解決”を押し付けるというような雰囲気が存在するように見えてなりません。

ウクライナ問題の解決において、完全に蚊帳の外に置かれた感じが否めず、かなり焦っている欧州各国はアメリカとロシアの間“だけ”で進められるディール・メイキングに危機感を募らせていろいろと口を挟んでいますが、当のトランプ大統領もプーチン大統領も全く相手にしていないのが現状です。

ホワイトハウスでの惨状(ゼレンスキー大統領がやり込められた)を見て、欧州各国は挙ってウクライナ支援およびゼレンスキー大統領支持を表明していますが、これはいろいろな話を総合的に分析してみると、明らかにディール・メイキングへの参加の機会を見つけ、少しでも分け前(外交的な成果と戦後復興における利権)を確保しようという魂胆が見え見えの状況が存在します。

ワシントンDCから傷心のまま、渡英したゼレンスキー大統領は、スターマー首相とロンドン市民から温かく迎えられ、首脳会談の場でスターマー首相は英国のウクライナへの支援の方針に変わりはないことを表明し、ウクライナが求め、トランプ大統領が提示してきた欧州軍による平和維持活動のための駐留に応える旨、表明していますが、これを額面通りに捉えて、「英国はウクライナを見捨てない」と前向きに評価する状況に少し違和感を抱きます。

英国はこれまでスナク前政権からストームシャドーなどを提供し、ウクライナへの支援を行ってきていることは事実なのですが、対ウクライナ支援の規模ではアメリカやドイツには到底敵わず、実際には口先で気前の良いことを言って、なかなか支援を出さないというのが現状です。

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