分断と対立の構造がより鮮明になりつつある国際社会
たまたま国連議場内で見かけたのですが、これまでロシアによるウクライナ侵攻から3年、あまり直接的に公の場で一緒にいるのを見たことがないのですが(もちろん国連総会や安全保障理事会における激しい口論は頻繁に目にしていますが)、米ロの関係者が人目に付かない場所で話し合っているのを確認し、何かが起きていると感じました。
緊張が高まる中東地域においては、アメリカが仲介しているイスラエルとハマスの協議の第1段階はまだ完遂されておらず、恒久的な停戦について協議する第2段階を巡る交渉は暗礁に乗り上げていて、いつイスラエルが再度ガザを攻撃するか分からず、また弱体化されているはずのハマスもイスラエルへの攻撃を開始するか分からない緊迫した状況にあるようですが、その場にロシアを通じてイランを関与させ、その見返りにイラン核合意を通じて米・イラン間の外交的な接触を図るという、これまでアメリカの政権が表向きにはやってこなかった奇策を講じて行き詰まりを打開しようとしているように、私には見えてきます(とはいえ、よくスイスで非公式な会合は行ってきましたが)。
ただ、米ロ間での話し合いの活発化により、ウクライナ戦争と中東における武力紛争の“解決”というディールが繋がり、すべてが奇跡的にうまく行けば、解決が非常に困難とされるこの2つの案件が一気に解決に向かうことに繋がりますが、その試みがうまくいかなかった場合、その破壊的な影響は一つの案件に留まらず、世界全体に一気に波及し、さまざまなdormant(寝ている状況)な紛争が一気に勃発し、世界的な紛争の連鎖が引き起こされることになる危険性があります。
各国が総じて内向き志向になり、“自国への直接的な害がない限りは国際案件に積極的にコミットしない”という状況が至る所で顕著になってきているように感じていますが、協調の機運が低減し、口は出しても行動しないという“外交の話し合いの現場”の風潮を一気に変えるためには、非常に強いリーダーシップと根気が必要になると考えますが、果たしてトランプ大統領は、自身が望み、就任演説でも目標として掲げたように、Peace Makerとして君臨し、自らのレガシーを【国際秩序を救い再構築したリーダー】として後世に記憶させることができるでしょうか?
それともそれ以外のリーダーが、同様のことを成し遂げる存在になることができるでしょうか?
一人のリーダーが世界の趨勢を変え、物事を好転または暗転させるというのは稀有なことだと考えますが、好転させるためのきっかけを作り出すことはできると考えます。
そのためには国際的な協調が本当に必要だと感じるのですが…今はまだその芽生えの気配を感じるどころか、分断と対立の構造がより鮮明になってきているように感じます。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年3月7日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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