一気に国際的な表舞台への復帰を目論んでいるロシア
中東問題については、トランプ大統領の突拍子もない提案を巡る情勢が注目を集めがちですが、トランプ政権が意気揚々と関与を深めているガザ情勢、レバノン情勢、そして新生シリアを巡る情勢は、実際にはうまく連携が取れておらず、至る所でAmerican Solutionsの一方的な押し付け状況が顕著になり、現地での反発が拡大して、さらなる緊張を生み出しているようです。
ガザ情勢については、アメリカ案は非常に危険なアイデアで、(国際法の原則に反して)パレスチナ人の自決権を完全に無視し、部外者であるアメリカがアラブをコントロールしかねない状況を民族浄化の意図ありという反発が、多方面から起きています。
そのような状況に直面し、これまで静観を保ち、紛争からは距離を置いてきたアラブ諸国が重い腰を上げ、総額200億ドル相当を、ガザにおける恒久的な停戦が成立した暁には、ガザ地区の復興に対して支出することを表明し、また停戦後の新生ガザの統治にハマスが関わらない枠組みを作る後ろ盾になることを表明していますが、その基盤にイスラエルが激しく拒む二国家共存の形態が存在することから、それが戦後復興の内容として実際に合意され、それが恒久的な停戦につながる見込みは低いと思われます。
実際、トランプ大統領からの強力な後押しがあるからだと思われますが、イスラエルはアラブ諸国からの提案に特にコメントせずにスルー(無視)していますし、決して公言はしないものの、今週ニューヨークで久々に話したイスラエルの政府関係者は「二国家共存という妄想に取りつかれ、それが地域に(そしてイスラエルに)安寧をもたらすというアイデアに基づくいかなる提案も受け入れることはない」と非難していることから、なかなかガザ地区の問題に解決の糸口が見つけられない現状を露呈しているように見えます。
アラブ諸国からの提案とは別に、アラブ連盟の本部があるエジプトと、連盟の中心にいるサウジアラビア王国とアラブ首長国連邦はイランとの協議も行い、地域の安定のために、ヒズボラやハマス、フーシー派などへの働き方を強めるように依頼するという外交的解決の模索が行われていますが、その場に参加したサウジアラビアとUAE、エジプトとカタールの交渉担当者によると、なんと協議にはロシアと中国の代表も参加していたとのことで(欧米諸国は不在)、中東におけるロシアと中国の影響力の拡大の兆候が見えてきて、何か新しい動きが加速しているのではないかと感じざるを得ない状況が生まれてきています。
そのロシアですが、複数の情報筋によると、ウクライナ問題を巡る米ロ協議の議題に、中東情勢とイランの核開発問題を含めることをトランプ政権に持ち掛け、これを機に、国際的な案件をひとまとめにして、それらに積極的に影響力を発揮することで、一気に国際的な表舞台への復帰を目論んでいる兆候が見えてきます。
それをトランプ政権側も受け入れているようで、近日中に行われる次の米ロ高官級協議において“中東案件の解決における協力”もアジェンダに加えられるようですが、それが実現することになると、ロシアの影響力はウクライナ問題に対する“解決”のみならず、中東における問題の“解決”にも及ぶことになり、それは若干拡大解釈すると、米ロで国際情勢の趨勢を決定するという構図が見えてきます。
その状況(米ロの急接近)に危機感を抱くのが中国であり、米国の“特別な同盟国であるはずの”英国であり、“欧州の盟主を自任する”フランスですが、今のところ、アメリカは英仏と、ロシアは中国と“良好な関係”を維持して、それぞれが進めようとしている計画への支持を取り付けようとする姿勢は維持するそぶりを見せる半面、実際には米ロのフォーカスは米ロ間の協力の強化に向いているように見えてきます。
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