■理想を緩める
『Re:vision』という著作において、根底となっているのは上記のような「理想」を緩めることです。
「こうなりたい」という思いを、「現実とはこうなっているべし」のような思いとして固定化させないこと。
重要なのは、理想を持たないということではありません。今、目の前にある現実とは違う状態をイメージできるのはすばらしい人間の能力だと私は思います。そうしたイメージが、今の自分が行う判断に影響を与えることもありうるでしょう。計画を立てることも、目標を見定めることも同じです。
それらは、今、目の前にある現実とは違っていますが、違っているからこそ価値があるのです。
しかしそれががっちり固定されていると、不都合を起こすことがあり、その不都合を手当てするために、Re:vision 的な考え方が役に立つ。そんな風に捉えています。
■根深い部分
難しいのは、そうした理想の固定性は、単純なものの考え方・見方ではなく、深く根付いたスーパーエゴに由来することです。
「正しい」ものは自分の外にあり、それを自分は受けとるだけだ、という世界観においては、理想を疑うことは許されず、常にそれが正しくて、それとズレた結果はすべて間違っている、ということになります。
そのような捉え方が、思考・認知・認識のスタートライン(いわば意識の前段階)になっているので、意識でそれを変えようとしてもうまくはいかないはずです。ゲームを始めようとしたときには、もうそのゲームは終わってしまっている。
「一度作ったタスクリスト、アウトラインを実情に合わせて書き換える」という作業は、そのような認知的処理を、外部的な情報ツールを介して発生させるものです。
おそらくですが、一度作ったタスクリストに対して、
- 順番を入れ替える
- 項目を削除する
- やったことを後から書き足す
- やったことに合わせて項目を書き換える
という処理をすることに、「背徳感」に似た気持ちを覚える人は一定数いると思います。まさにそれが規範性に触れている証拠です。絶対的に動かしがたいと思っていた、あるいはそのようなものとして扱っていたものが、実はそうではなかった、という事実を知ること。
もちろん、たかだかタスクリストを入れ替えただけで、全人格的なバージョンアップが行われるわけではありません。ごく些細な変化でしょう。
でも、それでいいのです。というよりも、それがいいのです。
スーパーエゴは時間をかけて育まれます。その解体・再編成もまた時間をかけて行うのがよいでしょう。たった数日で劇的に変わるなら、それは洗脳と区別がつきません。そうではない、ゆっくりとした道のりをゆきたいものです。
(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2025年3月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
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