トランプにすがり「関税は除外して」と哀願か?“植民地的”属国官僚に取り巻かれた石破首相が続ける情けない選択

 

「トランプ包囲網路線」を訴える日本経済新聞株式欄

それに対し、【3】のトランプ包囲網路線を訴えて小気味良いのは、日本経済新聞株式欄の人気コラム「大機小機」3月25日付の「無垢」子の「トランプ関税の全廃に立ち上がれ」である。要旨はこうだ。

▼このままトランプ関税が発動されれば、世界経済はスタグフレーション(景気後退とインフレの併存)に巻き込まれる。この危機を座視できない。トランプ関税の全廃に世界中が立ち上がるときである。

▼米大統領就任から2カ月、鮮明になったのはその「経済音痴」ぶりである。関税ほど美しい言葉はないと繰り返す。貿易黒字は利益で貿易赤字は損失と思い込む。高関税で貿易赤字は減ると信じる。貯蓄投資バランスを軸とする経済学の常識に欠けている。

▼第1に高関税で2国間の貿易収支の均衡はできない。第2に関税戦争はエスカレートする。危機は深まり、消費も投資も手控えられる。市場の波乱による逆資産効果もある。第3に軍拡競争次第で債務膨張も懸念される。第4にその影響をまともに受けるのは、トランプ政権を支えた社会的弱者である。危機が経済格差をさらに広げる。

▼期待できるのはカナダのカーニー新首相だ。カナダ銀行と英イングランド銀行という2つの中央銀行の総裁を務めた本格的な経済学者で「友情ある説得」が望める。マクロン仏大統領らトランプに物申せるEU首脳との共闘も頼もしい。IMF、WTOとの連携も欠かせない。

▼重要なのは日本の役割。閣僚が「日本だけは例外扱いに」と頼みこむのはさびしい。政府も議会も経済界も労働組合も消費者も、そして経済学会もトランプ関税の撤廃で声をそろえるときである。「裸の王様」に追従するだけでは国際信義を失う。世界に視野を広げて、自分さえよければいいという姿勢から卒業するしかない……。

自尊心を喪失した者だけがすがるトランプの膝

マーク・カーニーは、この3月に中道左派の「自由党」党首に選出され、9年4カ月も続いて最後はスキャンダルも出て迷走気味だったジャスティン・トルドーから首相の座を引き継いだ。米ハーバード大学と英オクスフォード大学で経済学を学んだ博士で、ゴールドマン・サックスで13年間、金融の実務に携わった後、2008年にカナダ中央銀行総裁、13年には非英国人として初めて英イングランド銀行総裁に就いた。世界史上、2つの国の中央銀行総裁を歴任した初めての人である。

政治手腕は未知数で、対立する保守党と37.5% vs 37.1%で支持率を競い合うという難局に早くも直面しているが、保守党のポワリエーブル党首がトランプやバンスと親しい関係にあることを売り物にしてきたことが仇になって逆風に遭う中、カーニーは4月末に総選挙を繰り上げて政権基盤を固めようと攻勢に出ている。

ポワリエーブルはトランプ政権との距離の近さを逆手にとって「カナダへの関税を止めるよう交渉する」と言っているが、これは上述【1】の石破と同類の下策で、総選挙に勝つことは難しいだろう。

国際関係論の専門家で加米関係に詳しいトロント大学のロバート・ポスウェル教授は「同盟国を脅す国は定義上、もはや同盟国ではない。これは国家の自尊心の問題であり、米国市場への依存を減らすためにカナダはあらゆる努力を払うべきだ」と言っている(日経3月25日付)。その通りで、この期に及んでトランプの膝に縋り付くような真似ができるのは自尊心を喪失した者だけである。

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