トランプにすがり「関税は除外して」と哀願か?“植民地的”属国官僚に取り巻かれた石破首相が続ける情けない選択

 

トランプが気づいていない2つの重要な事実

カーニーは恐らく、中学生に諭すように「関税という言葉ほど美しくないものはない」ことをトランプに教えるだろう。それでもトランプは聞く耳を持たないだろうが、大事なのはそうしたやり取りが米国民と全世界の人々の目にさらされることである。それを通じて人々は、世の中はトランプが言うほど単純でないことを知ることになるだろうが、その例を1つだけ挙げれば、英BBCのサイトが3月28日付に出した図入りの説明がある。

トランプは鉄鋼やアルミにも、自動車の完成車だけでなく部品にも、25%の関税を上乗せすると言っているが、

(1)テネシー州から出荷されたアルミ粉末は、
(2)ペンシルバニア州で棒状に加工され、
(3)さらにカナダに運ばれてピストン部品用に加工・研磨され、
(4)メキシコでピストンが組み立てられ、
(5)ミシガン州でエンジンとして完成され車に搭載される。

(2)→(3)は米から加への輸出になるので加側で、(4)→(5)は墨から米への輸出になるので米側で、それぞれ関税が発生する。(1)→(2)は米国内の移動、(3)→(4)は加から墨への輸出なので関税は発生しないが、(3)と(5)では今までかかっていなかった分が上乗せされ、それだけ自動車産業のコストが増える。しかしそんなことをしても誰も幸せにならない。

トランプはそれが嫌なら全て米国内でやれるようにすればいいと言うが、加と墨は米国との国境を跨がないようにして米国を抜きにし関税を回避するという手もあることに、トランプは気づいていない。また仮に米国内でやれるようにしようと思っても、それが出来る機械設備とそれを操る熟練労働者を抱えた企業があるかどうかは保証の限りではないことに、トランプは気づいていない。関税で脅せば何でも思い通りに運ぶと思い込んでいるところが、馬鹿なのである。

日本はカナダに学んで自尊心を取り戻す戦略に転換する必要がある。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年3月31日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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