プーチンを「習近平から引き離す」意図的な策略か?トランプ関税からの“ロシア外し”に飛び交うさまざまな憶測

 

トランプ関税リストからのロシア除外が呼ぶさまざまな憶測

ただ、これまでにウクライナ戦争の停戦協議にロシアが応じず、停戦合意が成立しない場合にはロシアにも関税措置を課すと脅しをかけていただけに、いろいろな憶測が飛ぶことになります。

1つ目は【トランプ大統領からプーチン大統領に対する最後通牒的なメッセージ】という見方です。

今回、露骨にロシアを相互関税のリストから外したのは、他国に対して異常な関税率を課す姿を鮮明に見せつけ、プーチン大統領に早期の停戦合意を促すためのメッセージという見方です。

ただこれは、すでに先に説明したとおり、ロシアにはあまり効かず、すでにロシア経済は制裁下でアメリカ・欧州抜きの貿易・物流のシステムが出来上がっており、今更アメリカがロシアに高い関税をかけたところで何も痛みを感じず、逆にロシアがそれに反応したら、アメリカに痛手となることを重々承知しているということから、あまり有効な見解ではないと考えます。

どちらかというと、すでに激化している米中間の摩擦をさらに激しくすることで、中国経済に痛手を与え、ロシアを経済的にも外交的にも、そして恐らく軍事的にも支えている中国の懐を痛めるという狙いがあるのではないかと考えられます。あくまでも私の憶測ですが、あながち間違いでもないだろうと感じています。

仮にそうだとしても、それをプーチン大統領はどう感じるかは分かりませんが、それは約1か月後にモスクワで行われる予定の中ロ首脳会談のころには見えてくるのではないかと考えます。

2つ目は【プーチン大統領を習近平国家主席から引き離すための意図的な策略】という見解です。

1つ目の最後にも触れたように、5月9日には中ロ首脳会談が開かれることになっていますが、その場で中ロが結束を固めて、中ロを中心に進めてきた国家資本主義陣営の基盤が強固なものになり、そこにグローバルサウスの国々や中東アラブ諸国、イラン、そしてアフリカの国々が加わって、反欧米の経済圏・勢力圏が形成されることを恐れているという見方です。

ロシアに塩を送りつつ、中国には塩対応をすることで、中国側に「プーチン大統領はトランプ大統領との間で何か取引をしたのではないか」と対ロ疑念を抱かせ、プーチン大統領と習近平国家主席との絆に楔を打ち込み、中ロ間の疑心暗鬼と緊張度を高めることで、対米抵抗勢力の成立を防ごうとする意図があるのではないかという見解です。

これは主に中国の専門家が口にする分析内容ですが、その確認のために、習近平国家主席は王毅外務大臣(政治局常務委員)をモスクワに急遽送り込み、ラブロフ外相との会談を行わせたと思われます。

その際、ロシア側はカウンターパートのラブロフ外相との会談に加えて、プーチン大統領が王毅外相に直接会うという演出を行って、その疑念の打ち消しを行い、習近平国家主席をモスクワに招くことに加え、自分も中国の対日戦勝記念式典に赴くことを約束して、中ロ間の結束は強固であり、絶対であることを示したと考えられます。

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