「憧れの存在」プーチンの魔法に見事にかかったトランプ
今週に入ってロンドンで米欧ウクライナの協議が行われましたが(ただしルビオ国務長官が欠席を表明したため、外相級会合は延期され、代わりに高官級協議に変わりました)、その場で提示された“停戦合意案”は、ロシアの条件がちりばめられており、ウクライナにも、欧州各国にも受け入れが非常に困難な内容になっています。
例えば「クリミア半島におけるロシアの実効的な支配をアメリカが承認し、クリミア半島をロシアの領土と見なす(そして欧州各国にも同意させる)」というものや、ウクライナ東南部4州については、「すでにロシアが一方的に編入した部分はもちろん、今でもウクライナ領として残存しているエリアもロシアに編入させる」という、これもまたロシアの要求をコピペしたような内容が提示されています(そして見事にプーチン大統領がウィトコフ特使を通じてトランプ大統領に伝えている「現時点の前線を認めることを前提とするなら、停戦協議のテーブルに就く用意がある」という内容にも合致します)。
ロシアは、ペスコフ大統領府報道官曰く「アメリカ政府の提案にロシアは非常に満足している」とのことですが、その背後には、ロシアが一向に停戦の協議を前に進めたがらないことにいら立つトランプ大統領の焦りが透けて見えますし、完全にロシアのペースにはまっていることを示していると考えます。
さらに最近のイースター(復活祭)の間の30時間の停戦をプーチン大統領が突如発表したことは、ただの目くらませと考えられますし、実際には「前線において停戦は行われていなかった」という情報も複数入っていますが、これはロシアがトランプ政権のレッドラインを見極めるための危ない賭けと見ることができるかと思います。
なかなか進展がない状況にかなり苛立ってはいるものの「プーチン大統領を説得できるのは自分だけ」と信じて疑わない(少なくとも表向きにはそう主張し続ける)トランプ大統領の心情は、前政権時にプーチン大統領と“良好な関係”を築いたという幻想と、長きにわたり抱き続ける独裁者・独裁体制への憧れと、その象徴的な存在としてのプーチン大統領への個人崇拝にも似た心理が今、トランプ大統領の取り扱い方を熟知しているプーチン大統領に利用されているように見えます。
今後、この幻想が幻滅に変われば、ロシアおよびプーチン大統領に対してどのような態度に出るかは予想不可能ですが、これまでのところプーチン大統領の魔法に見事にかかっているように見えます。
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