東南アジア諸国が早くも見せた「変節」の始まり
トランプ政権後、停戦協議の場でちゃぶ台返しを連発し、かつ相互関税を乱発して緊張を高めていますが、緊張の高まりと分断は、国際情勢の場に限らず、実はトランプ政権内でも起こってきています。
さっさとウクライナから手を退いて中国との対峙に集中すべきという勢力と、アメリカは国内マターに集中し、国際案件からは完全に手を退くべきという非干渉勢力、そしてアメリカはその影響力を活かして国際案件の解決に再登場し、アメリカ主導の国際秩序の再興を行うべきという勢力が政権内で対峙して、なかなか方針が定まらないという事態が顕在化しているようです。
陰謀主義者の女性の声を聴いてペンタゴンの高官を更迭したり、パウエルFRB議長に圧力をかけたかと思えば解任は考えていないという手の平返しを繰り広げてマーケットを混乱させたり、中国とのチキンレースも辞さないという強硬姿勢を貫くかと思えば、ベッセント財務長官を通じて「中国との貿易摩擦は近日中に解決する」と発言したり、「習近平国家主席とは友人であり、共に何かを作り出すのだ」と秋波を送ってみたりして混乱を作り出しています。
まさに混乱の極みですが、それがトランプ大統領とその側近たちの気まぐれで済まされる状況ではなくなってきており、世界の富を吹っ飛ばし、紛争の種を芽吹かせ、緊張を高めて一触即発の状況を間接的に作り出し、そして下手すればジェノサイドと民族浄化が繰り返されかねない事態が生まれてきているように見えます。
「トランプ大統領は何をしでかすかわからない」「トランプ大統領は次にどのようなことをするだろう」と各国がそわそわして右往左往する状況から、「トランプ大統領が何をするかわからないので、もう適当にあしらって、アメリカが混乱している間に分かり合える国同士で結びつき合って新たな秩序を作ろう」というようなアメリカ飛ばしの状況が出てくることも予想できます。
中国への警戒を強めていた東南アジア諸国が、習近平国家主席の訪問を、諸手を挙げて歓迎し、次々と中国とのパートナーシップを強化する方向に動いているのは、もしかしたら、その変節の始まりなのかもしれません。
その変節がアメリカの影響力低下で留まるのか?それともアメリカという重しが効かなくなって、一気に戦争が各地で勃発し、最悪の場合、核兵器使用の可能性をまじめに恐れなくてはならない状況が訪れるトリガーになるのか?
トランプ大統領のアメリカが国際情勢へのコミットメントから一気に手を退いたとき、どのような世界が待っているのかを予測するのは恐ろしいですが、もうすぐ政権発足から100日を迎えるにあたり、就任式で宣誓したように「世界に和平をもたらし、自由の火をかかげ、各国がフォローするような存在になる」べく、適切な判断を下し、行動を起こしてもらいたいと心より願います。
ニューヨークでアメリカ政府のいろいろな人たちに会う予定ですが、どのような話し合いになるのか、今から楽しみであり、心配でもあります。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年4月25日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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image by: Presidential Press and Information Office, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons









