この春の新社会人にとって、初めてのゴールデンウィークがやってきた。入社して1ヶ月あまり。入社式や研修、実際の業務などから、職場の実態が少しずつ分かってきた頃合いではないだろうか?そこで今回は米国在住作家の冷泉彰彦氏が、あなたの入った企業が「ヤバい会社」かどうかを見極めるポイントを解説する。もし今の会社が「メンバーシップ性強め」のダメ組織だったなら長居は無用、GWを活用して転職を真剣に検討したほうがいいだろう。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:メンバーシップ性「強め」企業は要注意
GW中に考える退職&転職、新入社員は会社のココに注目を
今回は、新入社員や若手社員の方が、自分の会社の将来性について、2025年春現在、どのように評価したらいいか?を考えてみます。
まず、入社式や普段の業務などを通じて「メンバーシップへの参加」が強調されていなかったか?という点がポイントです。
例えば、経営陣の挨拶の中に「一員として迎える」とか「ようこそ」といった言葉が繰り返されていたようなら要注意です。恐らくそこには、ネバネバした一体感、デフォルト設定された同調圧力を伴うコミュニティがあるからです。
このコミュニティは、まず幹部候補生である総合職正社員だけで構成された「閉じた集団」です。そして、恐らく「ようこそ」などと言っている集団においては、その正社員集団を維持することが、もしかしたら株主利益や国際社会への貢献より優先されるかもしれません。
「メンバーシップ性強め」企業に入社した若手は不幸になりやすい
このような「メンバーシップ性強め」の企業のヤバさは、まず新人の人たちを直撃します。これが最大の問題です。2つの危険があります。
1つは、とにかく若いうちは権限が与えられません。物理的な戦力、つまり作業や処理の戦力として、恐らく「見返りとしての給与・報酬」ではチャラにならないような「持ち出し」を強要されるでしょう。
そうした「持ち出し」あるいは「搾取」というのは、将来の「出世」に伴う高給で「長い期間を通じて」チャラになるという制度設計になっています。ですが、2025年の現在、どう考えても日本の多くの企業が「あと40年持つ」可能性は相当低いです。
ということは、現在「持ち出し」の状態に耐えても、その見返りはないかもしれません。就職できたからといって、自分の人生設計を企業に丸投げするのは危険です。
ブラック企業の寿命よりも、あなたの今後のキャリアのほうが長い
もう1つのリスクというのは、「メンバーシップ強め」の企業の場合、動作のほとんど全てが「自己流」であることが多いことです。
社会では通用しない法的にグレーな運用や、どう考えても非効率な動作、世界では通用しない低生産性などが、反省どころか「独自の企業風土、企業文化」だと自画自賛されているケースが多いということです。
この「自己流経営」がどうしてダメなのかというと、DX化も外注化もできない中で、結局は生産性や企業業績の足を引っ張るからです。
そして、新人にとって一番大切なのは、そのような「会社独自の自己流の手順」を必死に学んでスキル形成をしていたら、労働市場における自分の価値が上がっていかないという点です。
今はまだ、そこかしこに昭和の悪しき経営が残っています。ですから「メンバーシップ性強め」の企業で10年耐えたというような「キャリア」は、それだけで「我慢強さ」とか「組織防衛への参加姿勢が刷り込まれている」として、評価される場合もあると思います。
ですが、時間はどんどん過ぎていきます。ユニバーサルなスキルがないと、労働市場での価値を認めてもらえない時代はもうすぐです。このことを注意すべきだと思います。(次ページに続く)
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「学生気分を抜け」は「非常識な企業風土に洗脳されろ」という意味
ということで、あなたの入った会社が「メンバーシップ性強め」である場合は、要注意だと言えます。ここからは、もう少し具体的に、この「メンバーシップ性強め」であるかどうかを判定する方法をご説明しましょう。
例えば、入社式や、配属現場で「学生気分を抜け」というセリフを頻繁に聞く会社は、かなりヤバいと思います。一見すると、のんきな評論家的態度でなく、現場に目を向けたプロになれ、的な「まともな指導」に聞こえます。
ですが、本当は違うのです。会社が勝手な価値観で運営されていて「市民社会の常識とかけ離れた」企業風土が直っていないのです。「学生気分を抜け」というのは「非常識な企業風土に洗脳されろ」という意味であるかもしれないのです。
「人事や経理の仕事を省力化できない」もダメ企業の特徴
次に、これは中堅規模以下の企業が中心になる話ですが、人事や経理の仕事を省力化あるいは外注しているかどうか、この点もポイントになります。一見すると、外注しているとか省力化しているというのは、カネがないのでやっている、つまり危険ではと思うかもしれません。
でも違うのです。大勢の事務職を配属して、経理や人事の仕事をヘトヘトになるまでやっている企業、こっちの方がヤバいと思います。
そうした企業は、法令や社会制度をしっかり守ってタスクを標準化できていないのです。だから外注化も省力化もできない、つまりブラック性を抱えていると考えるべきです。そうした企業に限って「独自の企業文化」などを自慢しがちですが、要注意です。
「基幹業務にコンサルが入っている」企業は終わっている
それから、コンサルが跋扈(ばっこ)している企業も、相当に怪しいです。変化スピードの速い時代ですから、例えば国際市場へ出るとか、新規事業を広げるといった場合に、「社外の知恵」を活用するのは悪いことではありません。ですが、会社の基本的な戦略だとか、業務の基幹部分にコンサルが入っている場合は要注意です。
経営陣に「戦略構築力がない」とか「判断力がない」ということもありますが、一番多いのは、「極端に保守的」な会社で、社内から出た新しいアイデアを潰し続けてきたパターンです。
つまり、外部の人間であるコンサルに「金を払って考えてもらった」ということにして、初めて改革ができるというわけで、そうした企業の場合は、基本的に「終わっている」と見た方がいいでしょう。(次ページに続く)
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新人のほうが先輩より給与が高い「逆転給与」が危険な理由
あとは「逆転給与」の問題もあります。人手不足を背景に、新人の初任給を思い切って上げる企業が増えてきました。悪いことでないと思いますが、問題は2年目以上の給与が据え置きになっているせいで、1年目と2年目以上の間で給与が「逆転」しているケースです。
経営陣は少しでも良い人材を集めたいので、初任給を上げたのですが、余力がないので2年目以上の給与アップは追いついていないというわけです。
その場合は、新人に対して「先輩からの冷ややかな視線」が注がれ、初日からハラスメント的な雰囲気が感じられるとか、「高い初任給の世代は将来の昇給が抑えられてしまい、7~8年後には決して高い給与ではなくなっている」危険があると思います。とにかくこの「逆転給与」が発生している職場は要注意です。
いずれにしても、あなたの全人格を企業に丸投げして、10年の下積み生活に耐えて、後からついてくる権限とカネを手にして、40年の全体でチャラにする――という時代はもう終わっています。
自己流の勝手な業務スタイルを違法スレスレで続けながら、それを「独自の企業風土」だと自慢するというブラック性もダメダメです。
とにかく「メンバーシップ性」が強めな企業というのは要注意です。そうではなくて、世界標準の透明で効率的な企業運営がされていること。戦略に独自性がありその背後には明確な哲学がること。世界に通用する高スキルの集団であること。これらを1つのスタンダードなイメージとして持つべきです。
入った会社にそうした評価ポイントがあるのかどうか?それとも「メンバーシップ性強め」のダメ集団なのか?新人の皆さんはまず、この点を見極めることが大事です。
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※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年4月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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- 【Vol.582】冷泉彰彦のプリンストン通信 『アメリカ社会の停滞感について』(4/15)
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