印パ衝突が招く最悪の事態。中国の“必然的介入”でアジア太平洋地域が「世界核戦争の震源地」になる極めて近い未来

 

紛争を拡大する火種となる「互いに対する恐怖心」

そして、欲しい・もっともっとという心理・欲求と並び、戦争・紛争を引き起こす原因が【相手・他者に対する恐怖心の高まり】です。

ロシアがウクライナに侵攻した理由の一つにも“恐怖”がありますし、イスラエルとパレスチナの間にも常に“恐怖心の存在”が大きな理由として存在します。

そしてインドとパキスタンとの間の争いもまた、互いに対する恐怖心が火に油を注いでいると考えられます。

また直接的な武力紛争ではないですが、今はやりの貿易戦争、関税措置の発動、そして経済成長と影響力拡大が著しい国を最大の経済国が叩く(バッシング)もまた、相手に対する恐怖が火種になって拡大していく戦争の例と言えるでしょう。

かつてのアメリカによる対日貿易摩擦、ジャパンバッシングや、現在の米中間の経済戦争などがまさにそれにあたるのではないかと考えます。

ロシアはNATOや欧米諸国の東進による影響力拡大が、旧ソ連の共和国を含む自国のsphere of influenceを犯し、このままでは自国の国家安全保障さえも脅かされ、ロシア共和国の存続にも関わるという“恐怖”が増大するごとに、その影響圏を死守しようとする動きが活発化することが分かります。

今回のウクライナへの侵攻は一種の恐怖に突き動かされた行動という見方もできます。

ロシアにとってウクライナ(とベラルーシ)は最も近しい兄弟・姉妹国という認識が強く、かつてのソビエト連邦時代にも中軸・核心を担う存在と見なされていて、ロシアからするとロシア・ウクライナ・ベラルーシは不可分な存在という認識が根強く残り、人々の心理を支配しています。

そのウクライナが旧ソ連崩壊の混乱の中、欧米諸国の助けを得て独立を果たし、その後、紆余曲折がありつつもじわりじわりと欧米への接近を図っている姿に脅威を感じ、このままではロシアの国家安全保障を脅かすことになると信じたため、ロシア海軍の大事な軍港であり、かつロシア系(ロシア正教会)の住民が大多数を占めるクリミアをまず手中に収め、資源や海へのアクセスを拡大して確保するという動きに出たと分析できます。

政治的な工作を行ってウクライナのロシア化を進めている最中にゼレンスキー政権が誕生し、欧米への傾倒が顕著になると、ロシアは一気にウクライナを“取り戻し、恐怖の種を取り除くために侵攻という手段を選択したと考えられます。

ウクライナ側としては、このままではせっかく獲得した独立と主権をロシアに奪われ、結果としてロシアに“また”従属させられるとの恐怖から(もちろん、国際法上の自衛権の行使という点はありますが)、徹底的な抗戦を続け、欧米の価値観、つまり自由民主主義の危機というラベリングを行うことで、従来からの欧米の対ロシア観をクローズアップすることに成功して、欧米諸国を“ウクライナの土地を守る”戦いに引きずり込んだという見方が出来ます。

欧米諸国とはこれまで通りに“ロシアに対する恐怖”を煽りつつ、原則論を振りかざして支持を取り付けていますが、考えが読めないトランプ大統領に対しては、抵抗してみるものの、自国の復興の原資になる地下資源の権益を売り渡す振りをしてまで、アメリカの支持と支援の継続を取り付け、欧米諸国の“友人たち”の代わりに先頭に立って、皆が恐れるロシアの企てに立ち向かうというイメージをキープしようとしています。

ただ、ロシア側の優勢が明らかになるにつれ、関心は「ロシアに対抗するためにゼレンスキー大統領は適切なリーダーかどうか」という大きな問いが突き付けられることになってきていますが、果たしてトランプ大統領のアメリカと欧州各国が、停戦に実質的には関心がない(喫緊の必要性ではないと考えている)ロシアのプーチン大統領から何らかの譲歩を引き出すために、突然、ゼレンスキー大統領を見限るという“恐れ”も大きくなってきているように見えます。

このメルマガが配信される5月9日はロシアの対独戦勝記念日にもあたりますが、この日を境に戦況が一気に変わるようなことがあるかもしれないと、私は恐れています。

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