印パ衝突が招く最悪の事態。中国の“必然的介入”でアジア太平洋地域が「世界核戦争の震源地」になる極めて近い未来

 

核兵器による破滅的な結果を招きかねない印パの衝突

そして今、恐怖に基づく相互不信の極みの例として描かれるインドとパキスタンの間の緊張の高まりは、双方が核保有国であるという現実もあり、国際安全保障の場に大きな緊張と恐怖を与えています。

カシミール地方でのテロ事件に端を発し、インドとパキスタンがすでに軍事的な衝突をはじめ、相互に攻撃を加えている現状は、何かのタイミングやきっかけで自制の箍が外れた場合、紛争は一気に加速し、最悪の場合、両国が隣り合う地域で核戦争が勃発する状況になりかねません。

そうなると南アジア地域は大きな惨禍に見舞われることは間違いなく、同じくカシミール地方での領有権を争う地域最大の核保有国中国を巻き込み、必然的に介入を招くことから、非常にデリケートなバランスで和平が保たれ、安定が保たれてきたアジア・太平洋地域が世界戦争、それも核戦争の震源地になりかねない事態に陥ること必至です。

もしインドとパキスタンの緊張が、カシミール地方の領有権という欲求(want)を発端とするものであれば、核戦争という最悪の事態の回避はさほど困難ではないと考えますが、もし相互不信と恐怖心に端を発するものに発展したとしたら、それはイスラエルとパレスチナ同様、自身の生存に対する危機という認識が高まることから、偶発的な衝突が一気に本格的な戦争にエスカレートし、互いに引き際を見誤った場合には、核兵器による破滅的な結果を招く危険性が、これまでになく高まることは確実です。

もしこの戦争を回避する手があるとしたら、今回の発端となったカシミール地方におけるインド人観光客への攻撃と殺害の首謀者を、インドではなく、パキスタンが厳格に罰することを見せることなのですが、今のところ、リーダー同士のプライドのぶつかり合いと、長年の間に溜まりにたまっている相互不信が爆発し、エスカレーションを止めるきっかけが見当たらないという恐ろしい状況が広がっていると思われます。

アメリカのルビオ国務長官が仲介を申し出ていますが、正直なところ、あまり効果はなく、それよりは三つ巴でカシミール地方に関心を持つ別の核保有国である中国が冷静に対応し、インドとパキスタンの双方に自制を呼びかけ、かつ落としどころを見つける役に徹することができれば、まだ希望の芽はあるかなと感じています(一応、中国は仲介に乗り気のようですが…)。

中東でも、ロシア・ウクライナでも、そして印パのケースでも、アメリカや欧州諸国、中国などが挙っていろいろな仲介努力を行い、何とか最悪の事態を回避しようとしていますが、これぞ「船頭多くして船山に上る」状態になってきているだけでなく、すべて表面的なメイクアップで何とか争いを収めようとして、根本にある“憎しみ”や“相互不信”、“自身の生存に対する脅威”という恐怖心を解し、解決しようとする試みが欠如しているため、勝手な予測ではありますが、そう遠くない時期に、どこかの紛争案件が爆発し、世界を第3次世界大戦に引きずり込むような事態が生まれるような気がしてなりません。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • 印パ衝突が招く最悪の事態。中国の“必然的介入”でアジア太平洋地域が「世界核戦争の震源地」になる極めて近い未来
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け