米国でも中国でもトルコでもない。我が日本こそが「ウクライナ戦争の仲介役」として“稀有な存在感”を見せられる理由

 

必ずしも世界各地で歓迎されているわけではない中国

ただかつての米ソ冷戦時代とは違い、中国の軍事的なプレゼンスは決してグローバルなものではなく、あくまでも自国のSphere of influenceであるアジア太平洋地域圏に留まっており、世界の7つの海にプレゼンスを誇るアメリカの比ではありませんが(とはいえ、長距離弾道ミサイルは北半球経由でも南半球経由でも全米に届くほどの技術があるそうですし、最近は核戦力の拡大に勤しみ、軍事力の拡大を急速に進めています)、経済力ではアメリカ経済に並ぼうとするほどの発展を見せ、内政不干渉主義が多くの途上国の支持を集める外交姿勢を通して、中国経済の影響を世界各地に拡げています。

中国経済の浸透力が広がるにつれ、それを梃子にした外交的な力を身に着け、ここ数年はミッションインポッシブルと言われてきたサウジアラビア王国とイランの仲介や、パレスチナの諸勢力をUnited PalestineとしてまとめあげるPower Houseになってきています。

ただ、中国の影響力の拡大は必ずしも世界各地で歓迎されているわけではなく、支援が債務の罠として各国の権益を奪い去ったり、支援と並行して中国人移民の増大が社会問題化したり、地域への経済的恩恵(雇用含む)の波及が期待していたほどないことなどをベースに、中国に対する嫌悪感がクローズアップされることが多くあります。

それはまたグローバルサウスに類される国々からの対中警戒心の増加にも寄与し、欧米諸国と中国がグローバルサウスの支持を挙って取り付けようとする際に、landslideで支持を獲得できないことにも繋がっています(その背景には、インドのプレゼンスの大きさが存在することも一因としてあります)。

グローバルサウスは緩やかな結びつきで、その場の利害に基づいて連携する実利主義のグルーピングと定義づけられるかと思いますが、すべての構成国に共通する軸としては、「これまでの欧米諸国による支配的な状況を打破し、アメリカ離れ・欧州離れを加速し、世界の第3極としての勢力圏を集団として築き上げる」という共通認識が存在すると考えます。

その他、トルコの稀有な立ち位置など、特筆すべき姿勢はありますが、世界が見事に多極化する中、嫌われることなく、どのグループに対してもそれなりの発言力を持つ国が、わが国日本です。

もちろん、各国の内政上の理由で日本をやり玉に挙げる中国や韓国の方針、自国の存在意義として完全なる反日の姿勢を必要とする北朝鮮という特異な例はありますが、北朝鮮という例外を除き、中国も韓国も日本を完全に無視しては存在し得ないことをよく理解しているため、実質的な敵対を選択しないのが通例です。

問題があるとすれば、その稀有で奇跡的ともいえる日本の国際情勢における立ち位置を、私たち日本人が理解しきれておらず、その奇跡的な立ち位置と持っている力を存分に発揮できるリーダーがいないことだと考えます。

では、現行の国際紛争の解決に向けて、日本が自らの立ち位置を活かしてできることとはどのようなものがあるでしょうか?

まずロシア・ウクライナ戦争について見てみます。

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