日本を切り離して生き残ることは出来ないロシア
先週末からトルコ・イスタンブールにおいて久々のロシアとウクライナの直接協議が行われましたが、かなり前のめりなゼレンスキー大統領の姿勢をあざ笑うかのように、ロシアは高官級の協議に止め、欧米諸国およびウクライナ政府が提示していた30日間の停戦を含むすべての呼びかけをスルーし、さらにはこれまでトランプ政権が提示してきた“かなりロシア寄り”と解釈される停戦合意の内容をさらに上回る条件をウクライナに突き付け、実質的に進展はない状況を見せつけました。
イスタンブール入りしていたルビオ国務長官の同席も拒絶し、ロシアが戦況で圧倒的優勢に立つ状況を活かして一気にウクライナを追い込む算段をしていたロシアは、基本的にウクライナの属国化によるロシアの国家安全保障の確保を条件に掲げ、一切の譲歩を見せない戦略を取りました。
その後19日に行われたトランプ大統領とプーチン大統領の電話首脳会談でも、2時間余りにわたる協議も和平に進展はもたらすことができず、ついにトランプ大統領の口から仲介からの撤退を引き出すことにロシアは成功したと見ることが出来ます。
ゼレンスキー大統領および欧米諸国は多国間協議を進めようと提唱し、トランプ大統領もお得意の関税措置や対ロ制裁の厳格化などを掲げますが、ウクライナ案件以外の国際情勢において、アメリカの面子を保つためにはロシアの協力が欠かせない状況ゆえに、実際にはアメリカは一切手を打たないと思われるため、ロシア・ウクライナ戦争はこのままズルズルと、恐らく年末ぐらいまで継続し、なかなか現状では解決の糸口が見つからない状況になると思われます。
唯一前に進んだと思われるのは、今回、平行線に終わったと非難されましたが、直接的に協議をするチャンネルが再開したことは、話し合いによる(交渉による)解決のベースが出来たことと解釈できるところです。
この話し合いによる解決のベースは、ロシアとウクライナが直接協議するというスタイルが大前提ですが、このままアメリカが仲介するのは望ましいとは思われず、欧州は全く役に立たないことは明白ですし、中国は“中立”を謳いつつも実際にはロシア寄りであるため適任ではありません。
ここで候補に挙がるのが、実際に仲介トラックを走らせているカタールや、今回の直接協議のホストとなったトルコなどが有力ですが、どちらも強い外交力と交渉力を持つことは間違いないものの、協議を通して出来上がった合意を実行に移す後押しをするだけの力(経済力・資金力、そして場の設定をする調整力など)を有していないため、合意後のexecution能力に疑問が残ります。
そこで私はそれらを兼ね備えている日本が今後、仲介の労を取るべきだと考えています。単独で行うのもいいですし、トルコなどと協力して行うのもいいかと考えますが、ロシア・ウクライナ戦争が継続している中でも、戦後の復興に焦点を当て、そのプロセス・話し合いを主導しているのは日本であり、唯一、偏りなく長いスパンで状況を捉えられている稀有な存在であると見ています。
ロシアとの間には懸案の北方領土問題は存在し続けますが、かといってロシアも日本を切り離して生き残ることは出来ず、また日本側も欧米諸国が主導する対ロ経済包囲網にフルには参加せず、表向きにはエネルギー供給の安定のためという理由を掲げつつ、ロシアとのつながりをキープしていますので、ロシアとしても日本を無視することは、今後の国際情勢を考えるにあたって不可能です。
ウクライナについては、日本の存在は、大口をたたく欧米諸国ほど目立たないものの、約束した支援はすでに完遂していますし、先述の通り、戦後復興の音頭を取る立場に立っていることから、中長期的なパートナーとなるため、ウクライナも日本からの働きかけに耳を傾けざるを得ません。
日本にこの大役を担う能力はあると信じますが、唯一残念なのが、この仲介を仕切ることができるリーダーが思いつかないことです。
ロシアとウクライナ双方に顔が効き、リーダーと直接協議出来るリーダーが思いつきません。ここは大きな課題として残るかなと思います。
(中略)
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