米国でも中国でもトルコでもない。我が日本こそが「ウクライナ戦争の仲介役」として“稀有な存在感”を見せられる理由

 

印パ両国の緊張緩和にも大いに貢献できる日本

そして比較的近いところで緊張が高まるインドとパキスタンの紛争ですが、これについてもインドおよびパキスタンと、偏りのない友好関係を持ち、話し合いのチャンネルを持つ日本の立ち位置は、緊張の緩和に大いに貢献できると考えます。

カシミール地方の緊張緩和においては、当事国でもある中国の存在は大事な要素なのですが、中国は自らが利害を抱えているため、仲介の立場には向きません。

日本の場合、仮にインドとパキスタンの武力衝突が起きても即時に直接的な影響を受けませんし、カシミール地方に利害を有さない状況から、中立な第3者として調停を行うことが可能になります。

その際、大事なのは中国を無視しないことですが、上手に中国を巻き込みつつ、中国の顔を立てて功は取らせつつ、世界戦争前夜という危機を救ったというより大きな成果を実現する役割を果たすことができると考えます。

これらすべての役割を果たす十分なポテンシャルと素地は整っていると考えるのですが、先述の通り、これを執行できる人的なリーダーが不在なのではないかと懸念します。

現在進行形の3つの国際紛争どれをみても、実は日本は直接的な被害を受けることはありませんが、日本のグローバル化したサプライチェーンとエネルギーと食糧の確保という観点から、いかなる戦争の拡大も望ましくないことは確かですから、等間隔で距離を保ちつつ、直接的には関与しない方針という姿勢で守備を強化するのではなく、あえてアクティブに持てる力を存分に発揮して、世界平和に最前線で貢献してもらいたいと願っています。

日本がこれまでに行ってきた様々な国際貢献と戦後の行いを通じて築き上げてきた全世界的な信頼と親日感情、そして今でも経済大国であり、かつ数々のdisastersから立ち上がってきた復興のノウハウをすべてパッケージ化して動員すれば、解決は不可能と言われている紛争案件の解決と、崩れてしまった国際協調体制の復活に大いに貢献し、力を発揮できると私は信じています。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年5月23日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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