静けさの中の叫び。シリア拘禁施設を写した「13枚のモノクロ写真」の記憶

 

シリア内戦が激しくなったのは2014年。

ソーシャルメディアが広がったことで、ダマスカスの街が空爆や銃撃される様子は、手のひらのスマホに画像や動画として気軽に入ってきた。

爆撃され吹き飛ばされた建物、噴煙でおおわれる街角、路上に投げ出された遺体の数々。

それは今起きたことだと、その映像のキャプションは伝えていた。

ちょうどこの時期、ある高校に講演に行った際に、大きな行動で大きな画面に投影した攻撃の動画を見せながら昨日、シリアで起こったことだと伝え、私たちは何が出来るのだろう、と生徒に問いかけた。

もちろん、自問も含めての問題提起であり、その答えは私も見つけられていない。

その何も出来なかった日々を埋めていく今回のモノクロの写真は、色の情報を消したことで、より見る人の心の深層に迫ってくる。

これも報道の在り方としてあるべき姿であり、情報過多の時代だからこそ、重要な手法なのかもしれない。

受賞したモイセス・サマン氏は1974年ペルー生まれのドキュメンタリー写真家。

ヨルダンを拠点に20年間、中東を取材してきた。紛争の前線も取材してきたが、今回の写真は、同賞のホームページによると「戦争や革命の影から浮かび上がる深い人間の物語」を記録してきたもの。

アサド政権が崩壊し、現在新しいシリアが模索されているが、中東情勢や米ロの思惑が混在し、まだまだ不安は残る。

束の間の平和かもしれない今だからこそ、この写真は世界で共有したい。

13枚の中に壁の写真がある。

指先につけられたインクをぬぐおうとしたのだろうか、幾本もの指の跡がつけられた壁だ。

説明には「登録か身元確認手続きをした拘束された人によって残された壁に広がるにじんだ指紋」とある。

その壁の写真は、人が行う残虐性と不自由の理不尽さを雄弁に語っている。

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image by: Mohammad Bash / Shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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