最初から仕組まれていた米軍のイラン空爆。ネタニヤフの罠にまんまと引っ掛かったトランプと米国の愚かさ

 

湧き上がる「イランと米国のどちらが“ならず者”か」という疑問

師岡の一文を読んだだけでも、すぐに頭に浮かぶのは、イランと米国のどちらが「ならず者」かという疑問である。

イランでは、1920年まで約130年間続いたガージャール朝の下で20世紀早々から立憲政治の模索が始まっていて、モサデグはそのガージャール朝の血筋を引く名家の出。仏ソルボンヌ大学卒、スイスのヌーシャテル大学で法学博士号を得たインテリにして民族主義者で、その彼が51年に選挙を通じて首相の座に就くと、当時イギリスの「アングロ・イラニアン石油会社」によって完全に支配されていた石油利権を取り戻すべくその国有化に着手した。

イギリスのMI6(軍秘密諜報部)が米CIA(中央情報局)の応援を得てイラン軍部の親殴米派=ザーヘディ将軍を立て53年にクーデターを決行してモサデグを失脚させ、パーレビ国王に独裁体制を敷かせた。パーレビは石油収入の分け前を惜しみなく使って米国製の最新兵器を大量購入し中東最強の軍事帝国を作り上げると共に、「女性解放」を掲げてヒジャブ着用を禁止するなど外面的な西欧的“近代化”を推進した。

「世界で最も残酷な独裁」への民衆の抵抗とイスラムの伝統を無視した世俗化=西欧化への宗教界の反発が重なって、79年ホメイニ革命が勃発、中東世界最大の「反米国家」が誕生した。

さあて、ここまでを振り返って、どうだろうか。イランは米国政治に手を突っ込んで体制を転覆したことなど、当たり前だが、一度もない。米国は1950年代からイランの選挙で選ばれた首相を失脚させ、石油利権と武器輸出で大儲けをし、それが覆されると、一転、イランを「悪の枢軸」と決めつけるようになった。どちらが「ならず者」だろうか。

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