空爆ではイラン核開発を止められない明白な理由
今回のイラン側の被害がどれほどだったかはともかく、米カーネギー国際平和財団のジェームズ・アクトン核政策部長はNYタイムズ6月21日付への寄稿「米国は爆撃でイランの核兵器開発をやめさせることは出来ない」で、こう述べる。
▼イランのウラン濃縮計画には何百人、何千人の科学者や技術者が従事しており、指導的幹部を何人か殺したところで、10年か15年で計画は再建される。
▼イランがこれまでに製造した高濃縮ウランは、通常、スキューバ・ダイビング用の酸素タンクと同じようなサイズのシリンダーに蓄えられ、イスファハンに保管されていて、まだそこに置かれていたとしても爆撃では破壊できないし、ましてや、すでにどこかに分散避難されていればそれを探し出すのは極めて難しい。
▼また遠心分離機の小さくてどこへでも持って行ける部品の備蓄を破壊するのは一層難しい。そういうことを細かく監視するのがIAEAの仕事だが、トランプが第1期の時に「イラン核合意」を壊してしまい、そのためIAEAはもう7年もの間、査察権を行使できないでいる。
▼さらに、当たり前のことだが、イランはまだ外部に知られていない秘密施設を用意しているに決まっていて、イスラエルも米国も未知の施設を爆撃することは出来ない。それが温存されていれば、イランは恐らく数カ月で核計画を再開できるだろう。そうなれば再度空爆?再々度空爆?イランがさらに別の秘密施設を作り、フォルドよりもっと深いところまで掘ったら、どうするのか?
▼米軍の攻撃でイランの体制が崩壊したとしても、新政府が核を諦める保証はどこにもない。
だからトランプが4月にイランとの対話をセットしたのは正しいので、そこへ戻るべきだと、アクトンは勧告する。
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