7月20日に投開票が行われる参院選の大きな争点となっている消費税の扱い。自民党は野党の消費減税案を疑問視するとともに「消費税は社会保障の重要な財源」と主張していますが、そもそもそれは真実なのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「消費税は社会保障の財源」という言説は大嘘であるとして、そう判断せざるを得ない理由を解説。さらに自民党政権が国民にもたらした「悪夢の結果」を白日の下に晒しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「消費税は社会保障の財源」は大嘘
自民党が垂れ流すもっともらしい言説。「消費税は社会保障の財源」は大嘘
先日、都議会選が終わったと思ったのも束の間、もう参院選が迫って来ました。7月3日(木)が公示日で、7月20日(日)が投開票日です。そして、選挙が近づくと毎度お馴染みのデマや陰謀論がネット上に溢れますが、あたしが今回、最初に見つけたのが「自民党が少しでも投票率を低くして自分たちが有利になるように、三連休の中日を投開票日にした」という陰謀論です。
そもそも日本の選挙の投開票日は基本的に日曜日と決まっていますし、投開票日に都合が悪い人のために、ちゃんと期日前投票が設けられています。期日前投票は公示日の翌日から投開票日の前日まで、今回なら7月4日から7月19日まで16日間もあるのですから、誰でも投票に行くことができます。
日本の選挙の投票率が低いのは、自民党が何らかの工作をしているからではなく、「投票率は民度に比例する」という言葉の通り、有権者の民度が低いからなのです。
もちろん、この『きっこのメルマガ』を購読してくださっている皆さんは、民度も意識も高いので、投票に行かない人など1人もいないと思いますが、そんなあたしたちとはウラハラに、与党は「給付金」、野党は「消費減税」と、相変わらず有権者をバカにした民度の低い集票アピール合戦が続いています。
そして、先日の都議会選挙でも萩生田光一が都議連会長時代の裏金問題が原因で大敗した自民党は、もう後がない状況に追い込まれてしまいました。
そのため石破茂首相は、今回の参院選の勝敗ラインを「非改選と合わせて与党で過半数」という、あまりにも弱気な設定にしてしまいました。選挙に関係なく確保されている非改選組の議席数と、連立を組む公明党の議席数という、ダブルで保険をかけての勝敗ライン、まさに「なりふりかまってらんない」のでしょうけど、格好悪いですねえ。
これなら自民党は20議席近く減らしてもギリギリ過半数に踏みとどまれるので、実質的にボロ負けしても「勝敗ラインは死守した!」などとアジのひらき直りができるのです。
ま、勝敗ラインはともかく、大幅に議席を減らすことだけはハッキリしている自民党はヤケクソになったのか、ここに来て石破首相や森山幹事長の発言が支離滅裂になって来ました。
今回の参院選の争点の1つは、国民への物価対策、景気対策で、与党は自民党が公明党に折れる形で「全国民への2万円の給付金」を打ち出しました。これに対して、野党はそれぞれ小さな違いはあるものの、大きな部分では「消費減税」を掲げました。
与党の給付金は「選挙目当てのバラマキだ!」と批判され、一時は引っ込めた政策なので、自民党は正当化に四苦八苦しています。そのため、石破首相も森山幹事長も、この「2万円給付」の良い点をアピールすることができず、仕方なく野党の「消費減税」を批判するというスタンスを取って来ました。
自分の政策の良さをアピールできないので、相手の政策を悪く言う…って、まるで頭の悪い小学生みたいですが、それが今の自民党クオリティなのです。
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石破首相が講演で口にした驚きの「消費減税の問題点」
6月28日、静岡県沼津市で講演した石破首相は、立憲民主党など野党が参院選の公約に掲げた「消費減税」の批判に終始しました。まずは、すでに耳タコの「消費減税は法整備やシステム改修などの手続きに時間が掛かる」と指摘し「一方、自民党の現金給付は即効性があり物価高対策に効果的だ」と強調しました。
しかし、驚いたのはここからです。石破首相は「消費減税」の問題点として、次のように述べたのです。
石破首相 「立憲民主党など野党の皆さんは物価高対策として消費税の減税を掲げておりますが、お金持ちほどたくさん消費します。つまり、消費税を減税すると、お金持ちほど減税額が大きくなるのです。皆さん、本当にそれでも良いのですか?」
おいおいおいおいおーーーーい!…というわけで、石破ちゃん、こないだも「消費税の逆進性」について真逆のことを言って多くの人たちをポカーンとさせてましたが、やっぱ1ミリも分かってなかったのですね。
たしかに年間の消費額が大きいお金持ちのほうが減税額も大きくなりますが、贅沢品だけでなく食品や日常品などの生活必需品にもまんべんなく課せられている消費税は、所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性を持った税制の最たるものなのです。
総理大臣がそんなことも知らないなんて、さすがは6月30日に国家公務員としての夏のボーナス392万円が振り込まれた石破ちゃんです。毎月200万円を超える月給を貰っていながら、6月はそれプラス392万円で計600万円超。こんなに税金チューチューをしていたら、主食のお米も高くて買えない庶民の気持ちなんて分かるわけありませんよね。
そして、石破首相以上に国民の感覚とズレているのが、自民党の農水族のドン、森山裕幹事長なのです。森山幹事長は6月29日、奈良県五條市での講演で、複数の野党が掲げる「消費減税」について「代替財源を示さずに消費税を下げる議論をするのはポピュリズムの政治だ」と厳しく批判した上で「何としても消費税を守り抜く!」と語気を強めたのです。
この発言が報じられると、ツイッター(現・X)では「消費税を守り抜く」がトレンド入りし、SNS上には批判の声が巻き起こりました。
あたしから見たら、選挙に向けて国民全員に2万円ずつバラマキするほうが「ポピュリズム(大衆迎合)政治」だと思いますが、この人の感覚では逆のようです。
翌30日(月)の文化放送『長野智子 アップデート』では、生出演した政治ジャーナリストの角谷浩一氏が、名前こそ挙げませんでしたが次のように批判しました。
角谷浩一氏 「『何としても消費税を守り抜く!』と言ってる政権与党の幹事長がいらっしゃいますけど、政治家が何としても守り抜くものって、たとえば『平和』とか『国民』とか、それなら分かりますよ。でも『消費税』って意味が分からないですね」
ま、森山幹事長はもともと「消費税至上主義」で、ずっと前から「消費税は絶対に下げない」と言い続けて来ましたし、今回、物価高対策として時限的な消費減税を視野に入れた石破首相に釘を刺し、公明党と歩調を合わせた給付金バラマキに車線変更させた張本人なんですよね。
今回の参院選で、石破首相が公認したくなかった杉田水脈や西田昌司を強引に公認させたのも森山幹事長ですし、この人が二人羽織政治を続ける石破首相の「中の人」なのです。
そのため、石破首相は森山幹事長の受け売りで「消費税は社会保障の重要な財源」などと大嘘を垂れ流し続けているのです。石破首相にしろ森山幹事長にしろ、何なら立憲民主党の野田佳彦代表だって、消費税の重要性を訴える時には、バカのひとつ覚えの「消費税は社会保障の重要な財源」という大嘘を連呼して来たのです。
自民党政権による「消えた30年」と呼ばれる悪夢の結果
たしかに「消費税法」を見ると、第1条第2項に「消費税の収入については(中略)年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする」と明記されています。しかし、そのように明記されていても、消費税は特別会計ではなく一般会計に組み入れられており、他の一般財源とイッショクタに扱われているのです。
本当に消費税が社会保障のために必要な税金であり、消費税による収入は1円残らずすべて社会保障のために使うと言うのなら、消費税は他の一般会計とは切り離した特別会計にして、社会保障のための目的税にすれば良いのです。そうすれば、消費税の収入がいくらで、そこから医療と介護にいくら支出した、少子化対策にいくら支出したと、その内わけもハッキリするのです。
しかし、消費税は現在まで一般会計という「大きな財布」に組み込まれていて、他の税収とゴチャマゼにされて来ました。つまり、消費税の収入が何に使われたのか、国民には何も分からないのです。たとえば、消費税の収入の一部が米国製の兵器を買うために使われていても、原発推進のために使われていても、あたしたちには分からないのです。
でも、同じ財布だからこそ分かることもあります。それは「ザックリとした概算」です。消費税は今から36年前の1989年4月に、国民の大反対を押し切って自民党政権が強行導入したものですが、導入から2014年度までの26年間の税収は、総額約282兆円となりました。
しかし、消費税と同じ財布で管理されている法人税は、この26年間に何度も減税され、税収がトータルで約255兆円も減ってしまったのです。同じ財布なのですから、ある意味、法人税の減税分を消費税で穴埋めしているような話なのです。
そして、2014年4月、当時の安倍政権は5%だった消費税を「社会保障費の不足分を補うため」という理由で8%に増税しました。安倍首相は記者の質問に答える形で「消費増税による増収分は全額を社会保障に使う」と断言しました。
その一方で安倍首相は「企業が国際競争に勝ち抜いて行くための税制改革の検討を始める」と述べ、法人税をさらに引き下げると宣言したのです。そして、法人税の減税だけでなく、企業に課せられていた復興特別税は満了時期が前倒しされて4月からゼロになり、他にも数々の企業減税が行なわれました。
そして、1年後に試算してみたところ、消費税の増収分のうち社会保障に使われたのはわずか15%ほどで、75%は法人税の減税分の穴埋めに使われていたのです。
もちろん、お金に色は付いていないので、どこからの税収が何に使われたのか、明確には分かりません。しかし、いろいろなところからお金が入って来て、いろいろなところへ出て行く「一般会計」という1つの財布の中身について1年間の家計簿を付けてみたら、消費税の増収分の大半が法人税の減税分の穴埋めに使われていたことが判明したのです。
さらには、2019年10月、同じ安倍政権下で消費税が8%から10%へ増税された時も、あれやこれやと様々な企業減税が行なわれたのです。そして、その結果、全国の庶民から薄く広く巻き上げ続けて来た消費税の大半が、法人税減税というカラクリによって自民党のスポンサー企業へと流れ込み、莫大な内部留保となったのです。
これは予想でも仮定でもなく、事実であり実際の結果なのです。森山幹事長は6月29日の講演で「政権の選択を間違っては大変なことになる」などと述べましたが、これが30年以上に渡って自民党政権を選択して来た結果であり、これこそが政権の選択を間違った結果なのではないでしょうか。
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セコすぎるバラマキで国民を欺こうと絶賛画策中の自民党
政府は、日本が今も何とか世界4位にとどまっている「名目GDP」のランキングしか報じませんが、GDPを人口で割った「1人当たりGDP」を見ると、2022年にはイタリアに抜かれてG7で最下位になり、2023年には世界22位まで急落し、2024年には韓国にも抜かれて世界38位にまで落ち込み、今年2025年には50位以下に沈むと予想されているのです。これが自民党政権による「消えた30年」と呼ばれる悪夢の結果なのです。
帝国データバンクによると、今月7月に値上げされる食品は計2,105品目で、昨年同月の5倍に当たるといいます。また、今年1年間に値上げされる食品は2万品目を超え、物価高騰が最悪だった2年前と同じ水準になるそうです。
こうした現状で「消費減税」を主張する野党と、未だに「消費税は社会保障の重要な財源」などと大嘘を垂れ流して「2万円の給付金」というセコすぎるバラマキで国民を欺こうと絶賛画策中の自民党、あなたはどちらに1票を投じますか?
(『きっこのメルマガ』2025年7月2日号より一部抜粋・文中敬称略)
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