氷河期世代をあえて見殺しにした「正規雇用集団」の本音
正規雇用は幹部候補生であり、ならば将来の出世を人質に取られ滅私奉公をさせられても我慢するし、組織防衛のためには脱法行為も厭わない。そんな時代が長く続きました。
そのような環境に身を置く「正規雇用集団」の階層から見ると、非正規経験者というのは危険な異分子でしかなかったでしょう。当時、彼らを正規雇用するという発想はありませんでした。
実のところ、日本を衰退にまで追い詰めたのは、そのような「正規雇用集団」だったのですが、そんなことはお構いなしだったのでした。
2つ目は、氷河期世代はすでに50代に差し掛かり、男女ともに、これから家庭を形成したり子どもを育てる年齢を越してしまっている、という点が挙げられます。今のタイミングなら異分子を正規雇用しても「安全」というわけです。
氷河期世代を30代ぐらいまでに正規雇用してしまったら、企業や官庁は家族を養う有形無形のコストまで負担しなくてはなりません。だからこそ、当時の「正規雇用集団」は、氷河期世代を正規雇用するなど問題外という態度を取り、今さらになって対策を始めているのです。
氷河期世代は「団塊2世」という人口の塊にあたります。その2世の彼らが「団塊3世」の分厚い人口を日本で形成できなかったのは、前述のような企業や官庁の責任ということになります。
そう考えると、あらためてこの40年にわたる失われた時間の重さ、その間にまったく正しい判断のできなかった日本経済の暗黒の歴史について、絶望の思いを強くするのです。
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