石破首相は「日本の切り売り」をいつ決断するか?クルマ・農業・医薬品…傲慢トランプの関税圧力 交渉過程で「フェンタニル」キマる恐れも

 

農業と自動車、二正面での遅滞作戦は「参院選まで」が限界

5月15日、JA全中の山野徹会長は、日米関税交渉をめぐり赤沢大臣に対し「米側に一方的に譲歩して、コメなど農畜産物の輸入拡大をしないように」と申し入れた。価格高騰が続くコメの輸入を増やす可能性が取りざたされているおりだけに、なおさら農業関係者の抱く危機感は強い。

言うまでもなく、JAは自民党候補への農業票をとりまとめる司令塔だ。石破政権は自動車を守るために、日本の農業を売り渡すのではないかと疑念を抱いている。そこで、選挙協力を約束するかわり、赤沢大臣が勝手なことをしないようクギをさしたのだ。

ではなぜ、日本における「米国農産品の市場開放」が、トランプ関税を免れる“代償”として第一候補になるのだろうか。

トランプ氏の最重要支持基盤はアイオワ、ネブラスカ、カンザス、ウィスコンシン…といった中西部・南部の農業州だ。これらの州は、米中貿易戦争の報復関税で中国向け輸出(とくに大豆や豚肉)を大きく失ったため、新たな市場を必要としている。そのため、トランプ氏にとって農産品の販路確保は“減税”と並ぶ重要な“選挙対策”なのだ。日本との通商交渉の過程では最初の「割りやすい岩」でもある。

日本政府は、“農業を守り、自動車も守る”という不可能な政策方針を維持することで、当面の難関である参院選を乗り切ろうとしている。つまるところ、交渉の本番は“選挙後”というのが日米の共通した認識だ。

トランプ大統領が「日本は手ごわい」と言ったのは、もっと簡単に日本をねじ伏せられると当初はタカをくくっていたからだろう。だが、今では「30%か35%」とさらなる高関税をちらつかせて、参院選後にそなえた“覚悟”を日本側に促しているのだ。

今後、関税引き上げが8月1日に発効するまでの間に再交渉が行われるだろう。これまで何度も渡米しながら、手ぶらで帰国するしかなかった赤沢経済再生担当相に、ついにワシントンから正式な“招待状”が届くのだ。トランプ書簡はその前触れとしての意味が大きい。(次ページに続く)

print
いま読まれてます

  • 石破首相は「日本の切り売り」をいつ決断するか?クルマ・農業・医薬品…傲慢トランプの関税圧力 交渉過程で「フェンタニル」キマる恐れも
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け