トランプ氏の切り札「防衛」「フェンタニル」にも要警戒
ところで、今回の交渉が一筋縄でいかないのは、“裏メニュー”が存在するからでもある。一つは「防衛」、いま一つは「フェンタニル」だ。
トランプ政権はNATO加盟国に対しGDP比で5%、日本にはGDP比3・5%に防衛費を引き上げることを求めている。“金の切れ目が縁の切れ目”というトランプ氏のことだ。沖縄の駐留経費負担をさらに増やせ、防衛装備品はもっとアメリカ製を買え、という要求が重なってくるだろう。
仮に日本が防衛費を3.5%まで引き上げれば、単純計算で年間20兆円規模の支出が必要になるという。これは、現在の防衛関連費の2倍以上であり、社会保障や教育への予算圧迫は避けられない。とても、日本政府がのめる数字ではない。
一方、「フェンタニル」とは、いまアメリカで死亡者が続出し、社会問題になっている合成麻薬だ。中国で原料がつくられ、メキシコの麻薬カルテルが製造して、米国に送られているらしいが、日経新聞のスクープ記事によると、日本にとって衝撃的なのは、名古屋がその中継基地になっていることだ。
米中間の新冷戦の文脈で「フェンタニル」問題をとらえる向きもある。事実、トランプ大統領が中国からの「化学兵器的」脅威と位置づけ、「カナダやメキシコを経由して米国に入っている」として、中国だけでなくカナダ、メキシコにも高関税を発動した経緯がある。
トランプ大統領が、日本に対する新たな脅しの材料として「フェンタニル」を持ち出し、通商上の無理難題を押しつけてくる恐れは十分にある。
日米の最高権力がお互いエゴ剥き出しに、選挙を第一として動いているのだ。なんらかの知的工夫がない限り、力の強いほう、すなわちアメリカに有利に進むのは自明の理である。
信頼できる側近というだけで、通商交渉の経験がまるでない赤沢氏を担当大臣に任命した。その時点で、石破首相は負けている。トランプ大統領を篭絡できる豪胆な知恵者がこの国のどこかにいないものか。
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