与党の過半数割れで“政局大流動”の可能性。参院選の結果を左右する32の「1人区」に風は吹くか?

 

32の「1人区」が左右する勝敗の行方

先週は、結果を占うポイントの1つとして自公選挙協力の衰え具合を論じた。

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もう1つの大きなポイントは、32ある「1人区」の動静で、今回争われる125議席の約4分の1に過ぎないとはいえ、ほとんどの場合、自民候補と野党有力候補の事実上の一騎打ちとなるので風の吹き方で簡単に形勢が逆転したりして、事前の予測を覆すこともある。

前世紀末には1人区の数は24だったが、地方の人口減少が進んで32に増えているので、その分、以前より結果を左右する度合いが増しているとも言える。

上述のような予測の分かれが生じるのも、かなりの程度は、この1人区の読み方の違いによると見てよい。

そこで実際に、各紙誌の予測の中から「1人区」についてのバラ付き具合を見てみよう。文春=久保田(【文】)、サン毎=三浦(【毎】)、読売と朝日の7月5日付(【読】【朝】)を参照する。

(1)東北(6区)

東北6県は伝統的に野党が強い。【文】は自民優勢0:野党優勢6の自民完敗と見ているが、【毎】は福島は自民の森雅子が優勢、青森は互角と見て、自民1:野党4:互角1。【読】は自民0:野党4:互角2、【朝】は同じく0:3:3。

なので、ここでは自民は下手をすると0、もしかして福島で勝てればようやく1か。福島の表の出方が焦点となる。

(2)関東甲信越(5区)

関東では群馬と栃木が1人区。群馬はどの予測も自民でたぶん決まりで、栃木も【文】【毎】は自民優勢だが【読】【朝】は互角としている。

長野は羽田孜元首相以来の立憲地盤で揺るがず。新潟と山梨は【読】はほぼ互角なので、全体として自民が最低で1、最大で3か。

(3)北陸(3区)

伝統的に自民の基盤で、自民は石川、福井を抑え、富山でも互角。【毎】は富山も自民だが【文】は国民が獲ると見る。

(4)岐阜以西、関西から中国地方(8区)

【朝】は自民6で、三重のみ野党、和歌山が接戦と見る。【毎】は自民6、野党2、【文】は自民5、野党3で、野党が優勢なのは三重、和歌山、岡山としている。

(5)四国(3区)

3つとも野党でどの予測も一致。

(6)九州・沖縄(7区)

佐賀、長崎、熊本の西九州3区の評価が分かれる。【朝】は3つとも自民だが、【読】は3つとも互角。【文】は熊本だけ自民で、他の2つを含め6つで野党優勢。

沖縄は【文】と【毎】がオール沖縄=高良の優勢と見、【読】と【朝】は互角。鹿児島も注目で、【読】と【文】は野党優勢、【朝】は互角、【毎】は自民――と分かれてしまうほどの激戦のようだ。

以上の結果として、1人区の全32のうち……

   自民優勢 野党優勢 互角
【朝】  12     9    11
【読】    7    11   14
【文】  21    11     0
【毎】  16    12     4

いずれにせよ、3年前の前回の結果である自民の28勝4敗、前々回の同じく22勝10敗よりも下回ることはほぼ確実のようだ。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年7月14号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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