総合商社が中堅企業のロールアップを行うというアプローチ
数年前までは、私は、台湾企業による日本企業の買収には賛成でした。鴻海によるシャープの買収が良い例で、「経営陣が大半を占める取締役会、サラリーマン経営者、株の持ち合い」などにより真っ当な企業統治が機能せず、優秀な技術者が有効に活用されていない日本企業は、台湾企業による買収のようなショック療法を受けた方が良いと考えていたのです。
しかし、「台湾リスク」が高まるにつれ、それが必ずしも良いとは言えないように感じるようになったのです。
決して、中国や台湾が嫌いなわけではありませんが、中国・台湾に頼らなければ、ロボットやドローンはもちろんのこと、AIの頭脳である半導体ですら作れない状況は、地政学リスクが高すぎると思うのです。
この記事にも書かれている通り、日本には、芝浦電子に代表される「高い競争力は持っているものの、成長機会を逃している」中堅・小規模の日本企業は数多くあり、それらが買収の対象になるのは、経済原理から考えて当然です。
しかし、そんな形の「企業のロールアップ(関連する業種の企業を複数買収し、統合することで市場シェアを拡大する戦略)」を行う力(資金力・胆力・ビジョン)を持つのが台湾企業ばかりというのは、情けない話だと思います。
ちなみに、日本には、日本政策投資銀行という仕組みがあるにはありますが、これは「雇用を守る」という大義名分の元に大企業から不採算部門を切り出して救済するなど、政治的な道具となってしまっており、あまり期待しない方が良いと思います(参照:「日本政策投資銀行はゴミ溜め」)。
日本の場合、逆に、海外での営業能力を持つ総合商社が、政府の力など借りずに経済原理に基づいて中堅企業のロールアップを行い、AI・ロボット時代に重要な役割を持つ企業として育てる、などのアプローチも悪くないのではないか、と妄想しているところです。
(本記事は『週刊 Life is beautiful』2025年7月22日号「AI・ロボット時代の日本企業」の一部抜粋です。「Windsurfの買収劇」や「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナー(今週は13名の質問に回答)などメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です ※メルマガ全体 約1.5万字)
【関連】中島聡が考えた、人類の大半が「社会のお荷物」になるAI失業時代の社会保障。ベーシックインカムより幸福な制度をつくろう
【関連】中島聡の仕事術【最新版】超高速開発を実現するAIネイティブな組織とは?/Vue.jsかReactかアンソニー・フー氏との対話/企業がオープンソースに取り組むメリット
【関連】中島聡が憂慮する「AI自給率」が低い日本の未来。先の大戦での石油資源に相似も「国産LLMでは国民の幸福を保証できない」理由とは?
image by: Shutterstock.com









