何一つ結果を出せないトランプ外交の八方塞がり。首を突っ込んだすべての戦争を“激化させて長引かせる”有り様

Washington,D.c.,,Usa,-,April,7,,2025:,United,States,President
 

大統領就任前からウクライナ戦争の終結に絶対的な自信を見せていたものの、未だ何一つ状況を変えることができずにいるトランプ氏。そんなトランプ大統領はここに来て突如、プーチン大統領に対して「8月8日までの停戦合意受け入れ」を迫る意向を明かしましたが、その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、トランプ大統領が「8月」にこだわる理由を考察。さらに今年の8月に起こり得る「国際安保環境の大きな変化」について詳しく解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:国際情勢の熱い8月-分断の深化か?それとも解決に向けたプロローグか?

なぜトランプは「8月」にこだわるのか。国際社会が迎える2025年の“熱い”夏

「8月末までにイスラエルがガザにおける戦闘を停止し、ガザ市民に対する人道支援を全面的に実施しない場合は(誠意が感じられない場合には)9月の国連総会までにパレスチナを国家承認する」

7月24日にフランスのマクロン大統領が宣言し、29日には英国のスターマー首相、そして30日にはカナダのカーニー首相が相次いで宣言し、G7のうち、3か国が大きな外交的方針転換を明言しました。

英国とカナダについては、上記のような「~ならば」という“条件付き”とはいえ、確実にこれまでの対イスラエル方針を変える動きであり、それにはオーストラリアやニュージーランドも賛同する動きを見せています。

24日にマクロン大統領が無条件での国家承認を宣言した際には、トランプ大統領は「特に意味があるとは思わない」と述べたものの、28日に英国のスターマー首相と会談した際に「どのような意思表示をするのも各国の自由であり権利である」と発言したことを受け、29日に英国政府が方針転換に出て、30日にはカナダが追随したという流れになっています。

各国の方針転換の背後には、国際社会からの再三の激しい非難と停戦を求める声に加え、ガザで進む人道危機の深化に対する各国内外からの圧力も存在し、英国に至っては、議員の3分の2がパレスチナを国家承認するべきであるとの姿勢を示したこともあり、スターマー首相としては、28日のトランプ大統領との会談時にトランプ大統領が難色を示さなかったことから、立場表明に至ったのだと推測します。

カナダについても国内からの非難の声が多く、イスラエルに対して非難を行わないカーニー政権に対しての批判の高まりと、カーニー首相自身のスタンスから、カナダも英仏にジョインする形になったようです。

トランプ大統領がこれを気にすることはないかと思いますが、各国ともにアメリカとイスラエルから距離を置く姿勢を示し、「パレスチナ国家承認」というネタニエフ首相が最も嫌うカードを出し、かつ「9月の国連総会までに(または8月末までに)」という期限・猶予を与えることで、ネタニエフ首相にガザへの攻撃を止めさせ、人道的な危機の解消に尽力するように圧力をかけようとしています。

しかし、イスラエル国内では2023年10月7日の案件を受けて、「パレスチナとの共存」という選択肢が支持されることはなく、ネタニエフ政権が極右政党ユダヤの力を巻き込む連立政権であることや、ネタニエフ首相自身、二国家共存を馬鹿げたアイデアとこき下ろし、オスロ合意を無効にしていることからも、欧州およびカナダからの圧力に応えることはないと考えます。

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