トランプが「8月中の停戦合意」にこだわる理由
しかし、どうして8月に拘るのでしょうか?
それは9月3日に北京で開催される対日戦勝80周年の式典で、習近平国家主席とプーチン大統領が再び会い、そこに親中ロ陣営の国々を集めることで、欧米型の自由民主主義ブロックに対抗しうる勢力圏を強固なものにし、新世界秩序の構築に動き出すと言われているからだと思われます。
その内容がどのようなものかは9月になってみないと分かりませんが、9月3日までに停戦を成し遂げ、国際社会の目を再度アメリカに向けさせるために、8月は非常に激しい攻勢をアメリカがかけてくるのではないかと推察します。
ウクライナフロントでも、中東フロントでも、芳しい結果が実現できないのではないかと踏んだのか、アメリカ政府はタイとカンボジアの紛争がエスカレートしそうになった際、あえて停戦合意を導くために、両国に影響力を持つ中国に呼びかけて共同ファシリテーターを務め、ASEANの中で比較的中国と距離を置くマレーシア(中立的)に仲介を依頼するという離れ業をやってのけました。
7月29日には停戦合意が発効し、その署名式に米中共に駐マレーシア大使を証人として参加させて、和平に寄与したという成果を獲得しに行きました。
散発的な衝突がまだ起きているようですが、プロセスに日本を含む各国の駐在武官を引き込んで、まずひとつ成果を取りに行くという戦略を選んだように見えます。
この実施状況の検証を8月にマレーシア、米国、中国が音頭を取って実施し、そこに日本などの関心国が参加するというプロセスを作り出しましたが、両国民の感情が非常に悪化している中で非常にフラジャイルな停戦合意を継続できるかどうかは、米ロという2大国がいかに真剣にコミットし、実施を保証するのかにかかっていると考えます。この案件でも8月が非常に重要になってきます。
そして8月は、実はロシア・ウクライナ戦争の命運も決めかねない時期になると見ています。
トランプ大統領からの圧力はあるものの、ロシアとしてはあまり深刻に捉えていない半面、NATO経由で欧米の軍事支援がウクライナに届くまでの間に一気にウクライナに対する攻撃を強め、圧倒的に有利な状況を確定しようとしているようです。
これまでは8月は中休み的な性格があったように思いますが、今年の8月はどうもロシアは一気に攻勢をかけるつもりのようで、戦況が動く可能性があります。
さらにウクライナに追い打ちをかけることになりそうなのが、7月17日以降、ゼレンスキー大統領が大統領権限を一方的に強める大統領令を乱発していますが、それが身内(キーウ市長など)からも激しい非難が起き、国内各地でゼレンスキー大統領に反対するデモが多発しています。
これは恐らくロシアによる情報操作と工作も背後にあるのだと見ますが、着実にウクライナを内部から崩壊させるという動きが進んでいるのも事実です。
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