高市を担いで安倍政治の復活を図る麻生らの謀略を砕け!秋口までに引きずり降ろされる石破が「戦後80年談話」でカマすべき“最後っ屁”

 

日本を破滅に導いた吉田松陰とその信奉者たる安倍晋三

本誌の熱心な読者の皆さんはご記憶と思うが、本誌は23年6月=No.1211から24年11月=No.1285まで、16回にわたり「民権論」の系譜について断続連載し(未完のまま現在は休止中)、戦前戦後を通じた日本近現代史を「国権vs民権」の2つの大きな政治的・思想的潮流のせめぎ合いとして描くことを模索してきた。

特にその第12回=No.1269『西郷隆盛の「征韓論」、「西南戦争」を定説の色眼鏡を外して見直すと何が見えてくるのか?』で、渡辺京二説を引用しながら「征韓論」という定説とは反対に西郷は実は日朝連携論の立場だったことを述べていたので、上述の古川説に違和感はないだろう。

【関連】「征韓論」と「西南戦争」とは何だったのか。定説という“バイアス”を取り除けば見えてくる西郷隆盛の真実

明治政府は「薩長藩閥政府」と呼ばれるけれども、早くも明治6年のこの「征韓論」をめぐる政変で西郷が下野し、その4年後に西南戦争が起きて西郷が自刃してからは、「薩」抜きの「長州中心藩閥政府」となって片肺飛行で右へ右へと傾いて行った。

そのイデオロギーが吉田松陰の超野蛮なアジア蔑視の侵略征服論で、それにより日本は破滅した。その吉田松陰の考え方は(今までに何度も紹介しているが)彼の次の言葉に示されている。

▼国は盛んでいなければ衰える。だから立派に国を建てていく者は、現在の領土を保持していくばかりでなく、不足と思われるものは補っていかなければならない。

▼今急いで軍備をなし、そして軍艦や大砲がほぼ備われば、北海道を開墾し、諸藩主に土地を与えて統治させ、隙に乗じてカムチャツカ、オホーツクを奪い、琉球にもよく言い聞かせて日本の諸藩主と同じように幕府に参勤させるべきである。

▼また朝鮮を攻め、遠い昔のように日本に従わせ、北は満州から南は台湾・ルソンの諸島まで一手に収め、次第次第に進取の勢を示すべきである。

▼朝鮮と満州はお互いに陸続きで、日本の西北に位置している。またいずれも海を隔て、しかも近くにある。そして朝鮮などは古い昔、日本に臣属していたが、今やおごり高ぶった所が出ている。何故そうなったかをくわしくしらべ、もとのようにように臣属するよう促す必要がある。

▼オーストラリアは日本の南にあって、海を隔ててはいるが、それほど遠くでもない。……草木は繁茂し、人民は富み栄え、諸外国が争ってこの地を得ようとするのも当然なのである。所がイギリスが植民地として開墾しているのは、わずかその十分の一である。僕はいつも、日本がオーストラリアに植民地を設ければ、必ず大きな利益があることだと考えている。(「幽囚録」、奈良本辰也による現代語訳/「吉田松陰著作選」、講談社学術文庫より)

西郷亡き後の長州片肺政権は国権主義から帝国主義へと駆け上って吉田松陰シナリオの通りに国を導き、破滅した。しかしその国権主義の熱烈な信奉者が岸信介であり安倍晋三であり、その害毒は今の日本の進路にとっても大きな妨げとなっている。

他方、民権主義の系譜は、明治早々の中江兆民はじめ自由民権運動家たちから西郷を経て大正デモクラシー、昭和の石橋湛山の「小日本主義」へと繋がるが、上述の古川は超党派議員連盟「石橋湛山研究会」の共同代表の1人であり、また石破をはじめ岩屋毅外相、村上誠一郎総務相、中谷元防衛相、平将明デジタル相、伊藤忠彦復興相と、閣僚の6人が研究会に参加している。

だから石破が頑張りさえすれば、維新から160年の民権主義の流れをたどりつつ安倍的な国権主義を克服していく道筋を説く首相談話を閣議決定することも不可能ではないはずだが、彼にその気迫はなさそうである。

どうせ遠からず辞めるのだから、開き直って暴れるだけ暴れて貰いたいと思うのだが、残念なことである。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年8月11号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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