もともとは「2年間だけ」という約束で導入された税率
先ほど「現在ガソリンには1リッター当たり53.8円の税金が課せられている」と書きましたが、本来の税額は揮発油税24.3円と地方揮発油税4.4円の計28.7円なのです。残りの25.1円は「緊急の道路整備に備えるため」などと抜かして上乗せされた「暫定税率」なのです。
で、コレがいつから上乗せされているのかと言うと、半世紀以上も前の1974年からなのです。それも、もともとは「2年間だけ」という約束で導入された税率なのに、2年経ったら延長、2年経ったら延長、延長延長また延長で、今日まで50年以上も続いて来たのです。
ちなみに「暫定」という言葉を国語辞典で引くと「臨時的な措置」と解説されていますが、半世紀以上も続いている状態が果たして「臨時的な措置」と言えるでしょうか?
そして、コレと同じセリフを言って、2008年に「ガソリン暫定税率の廃止」を声高に訴えたのが、当時の民主党の川内博史隊長率いる「ガソリン値下げ隊」でした。民主党の「ガソリン値下げ隊」は全国で暫定税率廃止のキャンペーンを繰り広げ、コレをマニフェストに掲げて2009年の衆院選に圧勝し、自民党を下野させたのです。
それなのに、嗚呼それなのに、それなのに…というわけで、民主党、社民党、国民新党による連立政権が誕生し、さあ、鳩山由紀夫首相の舵取りで「ガソリン暫定税率の廃止」だ!…と思ったのも束の間、結局は財源の問題などで実現が極めて難しくなってしまったのです。だけど、あれほど鳴り物入りでキャンペーンしちゃったもんだから、今さら「やっぱ無理でした」なんて口が裂けても言えません。
そこで鳩山政権がどうしたのかと言うと、まずはマニフェストに掲げた通り、1リッター当たり25.1円のガソリン暫定税率を廃止し、その代わりに「当分の間税率」という税金を1リッター当たり25.1円課すことにしたのです。つまり「今日から10%の消費税を廃止します!その代わり新たに買い物税10%を導入します!」と言ってんのと同じことです。これじゃあ松田優作も草葉の陰で「なんじゃこりゃ~!」です。
つーか、民主党政権がやったのはこれだけじゃなかったのです。ガソリン暫定税率には「ガソリン価格が3カ月連続で1リッター160円を超えた場合、暫定税率を停止する」という「トリガー条項」が設けられているのですが、2011年4月、鳩山由紀夫政権からバトンタッチした菅直人政権は「東日本大震災の復興財源に充てる」という理由で、この「トリガー条項」を凍結したのです。
そのため、もう長いこと1リッター160円どころか170円だの180円だの、離島などでは1リッター200円超なんていうトンデモ価格が続いているのに、いつまで経っても「トリガー条項」は発動されず、あたしたちは今も払う必要のない税金をピンハネされ続けているのです。
そして、さらに言わせてもらえば、もともとガソリン暫定税率は「緊急の道路整備に備えるため」という理由で始まった「道路特定財源」なので、いくらムカついても自動車によって道路が劣化する以上、ドライバーが負担するのは仕方ないという空気がありました。
しかし、菅直人政権は、この「当分の間税率」に看板を掛け替えた「ガソリン暫定税率」を東日本大震災の復興財源に充てるため、それまでの「道路特定財源」から「一般財源」に変更したのです。
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