18日に行われたトランプ・ゼレンスキー両大統領の会談とその後の欧州各国の首脳を交えた会合で、明るい兆しが見えたかのようにも感じられたウクライナ戦争を巡る和平交渉。外交の専門家は今後の展開をどう読んでいるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、「戦争終結の機運が高まった」とする評価を疑問視せざるを得ない根拠を解説。その上で、各地の紛争の長期化が避けられない理由を解き明かしています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:すれ違う認識が生み出す紛争終結への道の険しい現実
すれ違う「ウクライナへの安全の保証」への認識のズレ。険しすぎる紛争終結への道
米ロ首脳会談において完全なる外交的勝利を収めたプーチン大統領。
アラスカ州アンカレッジの米軍基地にプーチン大統領を迎えたトランプ大統領は、儀仗隊の代わりに戦闘機を並べ、あのB2戦略爆撃機を飛行させるというパフォーマンスを見せましたが、限りなくロシアに寄り添う姿勢を貫き、会談はロシアのペースで進められました。
アメリカ政府側が発表していた当初の予定では、首脳会談は7時間から8時間ほどを見込んでいたようですが、実際には2時間弱の意見交換に終わり、Greetingsの際を除けば、1-on-1の首脳会談は行われず、両国の閣僚を交えた会談となりました。
いろいろな報道がなされていますが、具体的かつ前向きな成果は見えて来ず、この米ロ首脳会談はプーチン大統領とロシアに対ウクライナ攻勢を強めさせるための時間を稼がせただけではないかと思われます。
「プーチン大統領が、これまで頑なに拒んできたゼレンスキー大統領との首脳会談開催に賛成した」「2週間以内に開催される見込みだ」と“成果”が紹介され、18日に欧州の首脳たちと挙って訪米してトランプ大統領との会談に臨んだゼレンスキー大統領も「無条件での首脳会談に応じる」と表明したことで、ロシアとウクライナの戦争終結の機運が高まったように評価されましたが、ロシア政府からの揺さぶりにより、また見通しが見えづらくなっています。
会談にも同席したラブロフ外相(ロシア)は、ウクライナとの首脳会談の実施について言及はするものの、「首脳会談を実現するには、それなりの準備を要する。まずは関係閣僚間でのすり合わせが必須」と釘を刺し、早くもロシアによる時間稼ぎの様相を呈してきました。
18日のウクライナと欧州首脳との会談後、トランプ大統領は「ロシアのプーチン大統領も、欧米諸国がウクライナに対する“安全の保証”を行うことに同意した」と発表し、ウィトコフ特使も「NATO型の集団での安全の保証にロシアが同意した」と述べ、ロシア側で大きなギアチェンジが行われたのかと感じましたが、ロシア側は18日に「NATO加盟国によるウクライナへの派兵は到底受け入れられない」と提起し、すでにフランスやドイツ、英国などが“紛争終結”の構想の中核を担う平和維持部隊に参加することにNOを突き付け、国境の停戦監視に向けたデザインを根本から覆す動きに出て、揺さぶりをかけています。
これは2014年のロシアによるクリミア半島併合後に締結されたミンスク合意の失敗を想起させ、早くも失敗の匂いがプンプンしてくる状況に見えてきます。
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