米露首脳会談も“演出”か?利益につながる「戦争の長期化」を望むプーチンと習近平と“あの国”の首相

 

見えてくるロシアとサウジアラビアのウィンウィンの関係

この“和平・停戦交渉をしつつ、軍事侵攻を止めない”という状況は、まさに今、私たちがガザ地区で見ているイスラエルの姿勢です。

今週に入り、以前アメリカ政府が提示したものとほぼ同じ内容で、かつエジプト政府とカタール政府が仲介案として出した停戦案にハマスが合意し、60日間の戦闘停止と人質の解放(10名?)にコミットする旨、伝えましたが、イスラエルはそれに反応せず、カッツ国防相はすでにガザ全域に対する作戦の実行を支持し、対ガザ人道支援の再開というカードをチラつかせながら、力による支配を行っています。

極右からはガザのみならず、パレスチナの存在を消滅させるべきという意見がネタニエフ首相に届けられていますし、さらにはシリアやレバノンなどの制圧と、要すればヨルダンにおけるパレスチナ勢力の壊滅まで視野に入れた“大イスラエル”計画と作戦が机上に載せられています。

これがサウジアラビア王国をはじめとするアラブ諸国を刺激し、ファエサル外務大臣によると「イスラエルは完全にレッドラインを越え、アラブ全体に戦いを挑むつもりのようだ。その意図は必ず挫かれるだろう」と不穏な空気が流れ、アラブ連盟内での意見が次第に過激なものになってきていると聞いています。

そして先週末の米ロ首脳会談後に出てきたプーチン大統領とゼレンスキー大統領との首脳会談、そしてトランプ大統領も加わる3者会談の場所選定に絡み、ロシアがサウジアラビア王国にヘルプを求める動きに出ています。

トランプ大統領はハンガリーのブダペストを提案し(プーチン大統領としては好都合。オルバン首相は親ロですし、ハンガリーは国際司法裁判所から脱退しているため、プーチン大統領には逮捕の心配はない。ゆえにゼレンスキー大統領は反対)、欧州(特にフランス)は中立国スイス(恐らくジュネーブ)での開催を提案しています。

ロシアは、現時点では明言していませんが、プーチン大統領はMBS(モハメッド・ビン・サルマン皇太子)と首脳電話会談を行い、プーチン大統領がMBS皇太子に対して米ロ首脳会談の内容を“報告”し、今後の対応について協力を要請したという情報があることから、サウジアラビア王国を引き込むことで、状況をさらに複雑化していると見ることもできます。

バイデン政権下でmarginalizeされたサウジアラビア王国とMBS皇太子にとっては、外交舞台に再登場する好機でもあるため、サウジアラビア王国の動きに要注目です。

このロシアとサウジアラビア王国の結びつきの強化の背後には、サウジアラビア王国の意図も存在し、アラブ諸国がイスラエルと事を構える必要が出てきた際には、ロシアに味方してもらいたいという思惑がちらつきます。

ロシアにとっては、対ロ制裁で悪影響を受ける資源輸出の面を、サウジアラビア王国が引っ張るOPECプラスの枠組みの積極活用と協力により、補うことができる、まさにウィンウィンの関係が見えてきます。

これは同じく仲がいい(関係を修復した)トルコを巻き込み、ロシアとタッグを組んでいるイランともすでに外交関係の樹立が行われていることと、中国との協力の強化という現実も加え、イスラエル対策という喫緊の課題に対応するための体制作りを急ぎ、代わりに、それが何を意味するのかは別として、サウジアラビア王国がアラブ諸国を巻き込んで、ロシア・ウクライナ戦争に対して対ロ支援を行うという構図が出来つつあります。

これでロシア・ウクライナ戦争とイスラエルと中東の対立の激化をリンクさせることになり、戦争の長期化が利益に繋がるロシアや中国はもちろん、すべての非難の矢が自国に向かない状況が作れるイスラエルのネタニエフ首相も、この構図を喜ぶ可能性が高まります。

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