ウクライナを軍事的にも政治的にも責め立てていくプーチン
いろいろなオプションそして要素が絡み合う中、トランプ大統領が強く求めるロシアとウクライナの首脳会談、および3カ国での会談の実現をロシアとしては何が何でも急ぐことはなく、あくまでもアメリカからの諸々の制裁をできるだけ遅延させ、その間に和平交渉でのカードを増やすために、夏から秋にかけて攻勢を強め、少しでも支配地域を拡大するための策を打つ時間的な余裕が生まれるというのが、現実的な見方ではないかと考えます。
そして何よりも「ロシアにとって現在の戦況は有利と見られていること」は真剣に和平を進めるにあたって、大きなネガティブインセンティブとして機能することになります。
ウクライナとしては、ロシアとの戦争を継続するためには欧米からの武器弾薬の供与は喫緊の課題ですが、イランと北朝鮮からの武器弾薬の支援が期待できるロシアと違い、すでに対空ミサイルや弾薬の在庫が底をつきかけているため、早急に支援を必要としています。
今回の米ロ首脳会談を受け、欧米諸国の首脳たちのバックアップも得て、対空ミサイルの供給が行われる見込みですが、ドイツのIRIS-Tミサイルは最先端のもので期待されるものの、実はドイツ軍への配備すらまだ始まっていない状況で、スピーディーな供給は期待できませんし、フランスのCrotale NGミサイルは低高度で飛んでくるミサイル以外迎撃できない時代遅れのものであるため期待できません。
そうなると頼みの綱はアメリカ軍になるのですが、ご存じパトリオットミサイルはイスラエルに優先的に提供していることもあり、最近の分析では全世界での防衛に必要な在庫数の25%ほどしか残っておらず(アメリカ本土の防衛用も含む)、以前、ドイツがウクライナにパトリオットミサイルを供与しましたが、ドイツも在庫を抱えていないため、現実的ではありません。
このところ尋常とは思えない数と規模のミサイルおよび無人ドローンによる攻撃をロシアが行っていることを考えると、ウクライナの迎撃能力が充実するまでにロシアに攻撃し尽くされることが目に見えていますが、どのようにして【ウクライナの安全の保証】を実現するのでしょうか?
具体的なプランが見えない中、口先だけの欧州と、本気で絡むつもりがないアメリカが、いくら空約束をウクライナに対して行い、ロシアに首脳会談の早期実現と和平の実現を求めても、ロシア・ウクライナ戦争が早期に終結するための具体的な道筋が見えてこないのが本当のところではないでしょうか。
私は予想屋さんではありませんが、いろいろな状況や情報に鑑みると、ロシアはゼレンスキー大統領との首脳会談を餌に使って、可能な限り時間稼ぎをし、その間にウクライナへの攻勢を強めていくため、この戦争は長期化することが必至だと感じています。
特に今回の米ロ首脳会談で明らかになったように(そして欧州各国とゼレンスキー大統領が懸念したように)、和平合意を協議するとは言っても、戦争・戦闘は並行して継続しているため、ロシアは予定通り、夏から秋にかけてウクライナのインフラを徹底的に破壊し、すでにウクライナ国内で燻る反ゼレンスキー勢力を焚きつけて、軍事的にも、政治的にも責め立てていくものと思われます。
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