米露首脳会談も“演出”か?利益につながる「戦争の長期化」を望むプーチンと習近平と“あの国”の首相

 

ウクライナへのNATO部隊駐留など認めるはずもないプーチン

三つ目は【“ウクライナへの安全の保証”に対する認識のずれ】です。

先述のようにアメリカのトランプ政権は、直接的にアメリカの地上部隊を平和維持部隊としてウクライナに派遣するつもりはなく、あくまでも欧州各国と志願国による部隊派遣を意図しており、それに対して間接的な支援を行うという意味であると捉えています。

空軍力による支援や、対ロ外交支援、そしてNATOまたは志願国連合に対する金銭的な支援がそれにあたると考えます。それをウィトコフ特使などは「NATO-likeな軍事支援が可能ではないか?」との認識を持っています。

欧州はこの認識を真に受けて支援を考え、そして19日には支援国会合をオンラインで主導していますが(日本も石破総理が参加)、この場にアメリカ政府もトランプ大統領も参加しておらず、“安全の保証の提供”という観点からは一抹の不安を感じさせる状況だと懸念します。

トランプ大統領の認識では「プーチン大統領も集団的な安全の保証への参加、そして停戦監視部隊のウクライナへの派遣に対して賛意を示した」とのことで、それが今回の議論や支援国会合のベースになっているのですが、当のロシアは「NATO加盟国によるウクライナへの部隊の派遣は絶対に容認しない」と反応し、関係者間、特に米ロ間での認識のずれが露わになっています。

それは必然的なずれであると考えますが、元々、そして今回の米ロ首脳会談でも、プーチン大統領は重ね重ね「紛争の解決のためには(和平合意を締結するには)、ロシアが抱く安全保障上の根本的な原因が完全に取り除かれなくてはならない」と明確に主張し、予てよりNATOの東進を阻止することを要求していることからも、ロシア国境の隣にNATOとその仲間たちの部隊が駐留することを認めないだろうと考えられます。

それが四つ目の【ウクライナのNATO加盟を許さない米ロの姿勢】に繋がります。

先日のNATO首脳会談においてトランプ大統領の強い要請を受け入れ、各国は2035年をめどにすべての加盟国が防衛費をGDP比5%(軍事費・防衛費がGDP比3.5%で、インフラ整備などの関連費用がGDP比1.5%)にすることに応じましたが、それが完遂するまでの間はNATOへの財政的・軍事的な貢献はアメリカが大半を担う状況に変わりありませんが、ウクライナが加盟することになればその負担はさらに膨らむと考えているトランプ政権としては、これ以上の重荷を負いたくないことと、ロシアのレッドラインを明らかに超える行動は控えるべきと考えていることがあり、アメリカ政府はウクライナのNATO加盟を取り合わず、クリミア半島同様、ウクライナに諦めることを強く求めています。

以前より、NATO内では「ウクライナやジョージアのような国々をNATOに加えることはロシアを余計に刺激するため賢明ではない」との方針・共通認識があるため、無用の厄介を背負い込み、欧州にとっては自国の安全保障問題となり得る火種(ロシアに攻撃される)を抱える可能性がある選択肢は取り得ないことははっきりしているため、再三、ゼレンスキー大統領が求める加盟交渉の開始ものらりくらりとかわしているのが実情です。

NATO関連の問題は元々全会一致の原則ゆえに決定が難しい上、アメリカの意向が強く反映されることは避けられず、アメリカがウクライナの加盟を歓迎しない雰囲気が固まっている限り、現実的な選択肢とはなりません。

代わりにEU加盟が取り挙げられたことがありますが、トランプ政権としてはアメリカに直接的に関係がないため止めませんが、EUにとってはアメリカなしでの対ロ安全保障対策を強いられることを意味し、ロシアとしてもアメリカがいないEUならば御しやすいと考えているため、ウクライナがEU加盟を狙うことについては、特段拒否反応を示しておらず、逆にEUに対する圧力のカードとして用いています。

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