はまりかねない「何ら解決をもたらさない」という悪循環
そして最近、インドの緊張緩和を努める中国も、2026年に太平洋地域における軍事力がアメリカのプレゼンスを上回るまでに、アメリカの対中攻撃のフォーカスをずらし、強国化のための時間稼ぎができるという、こちらもまた望ましい状況が生まれることになるという、なんとも皮肉な状況が表面化しつつあるように見えます。
このバランスを崩すことがあるとしたら、ゼレンスキー大統領が国内で突如失墜して(18日にはトランプ大統領に対して大統領選実施の可能性に言及していましたが)、戦争がロシアの勝利という形で終結するか、ロシアとアゼルバイジャンの間で高まる緊張が戦争に発展し、そこにトルコがロシアの敵として介入したり、最近、アメリカの後ろ盾で解決を見たとされるナゴルノカラバフ紛争(アゼルバイジャンとアルメニアの間の和平合意)が突如崩れたり、またはカシミール地方を巡る中印パキスタンのデリケートなトライアングルが崩壊する不測の事態が起きる場合でしょう。
いろいろな紛争の種が連鎖して大きな戦争に発展しかねないとの懸念はぬぐえないものの、ロシア・ウクライナ戦争が勃発してからすでに3年半、イスラエルとハマスの戦闘ももうすぐ2年が経ちますが、当初は国際経済へのダメージも大きく、コロナパンデミック後の回復に水を差してきましたが、皮肉にも経済は現状に順応し、各地で戦争が継続している状況がbusiness as usualになり、軍事産業の興隆も後押しして、現時点では世界経済は盛り上がっているように見えます。
この経済状況も継続する限りは、戦争が長期化する要因となることから(特に経済的な理由から紛争解決を急がない機運?!)、米ロ首脳会談をはじめとする様々な取り組みが、表現は悪いですが、一種の政治ショーとして消費され、何ら解決をもたらさないという悪循環にはまるのではないかと懸念されます。
紛争調停を生業とする身にとっては、何だか悲しい状況なのですが…。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年8月22日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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