ウクライナ戦争の軍事的な解決にコミットする気がないアメリカ
19日に日本を含む30か国ほどの首脳がウクライナに長期的な安全の保証を与えるための枠組みを話し合うオンライン会議に参加し(英仏独が主催)、停戦監視の在り方とウクライナにおける戦後復興の案を練ることに合意したものの、早くも暗雲が立ち込めています。
その暗雲の原因の一つは、“金も出さず、自分たちは損をしないで口だけ出して無駄にプロセスを遅らせる”欧州の相変わらずな姿勢がありますが(明らかに影響力も実力も衰退していることを認められない欧州各国のジレンマとでも言いましょうか)、他に原因を挙げるとしたらどのようなものがあるでしょうか?
一つ目は【ロシア・ウクライナ戦争の軍事的な解決にコミットする気がないアメリカの基本姿勢】です。
ここでいう軍事的な解決とは、ロシアとの戦争も厭わず、今回話し合われた“ウクライナの安全の保証”のために米軍も地上部隊を派遣して、ロシアに対して確固たるメッセージと覚悟を示すことを意味しますが、トランプ大統領は元々その気はなく、計画もありません。
代わりに欧州各国から成る部隊に治安維持と停戦監視の任を負わせ、アメリカはその努力を空軍力から支援するという数歩退いたコミットメントに留まっているため、対ロの軍事的な抑止に繋がるかは不透明です。
二つ目は【クリミア半島の帰属をめぐる認識のずれの存在】です。
2014年にクリミア半島を電撃作戦により併合したロシアとプーチン大統領にとって、クリミア半島は政権と体制の正統性を支える重要なシンボルであり(実際にプーチン大統領の支持率を急激に向上させた)、すでに11年が経過した今、ロシアにとってはクリミア半島の帰属は既成事実とされ、unnegotiableな要素となっています。
トランプ大統領は、プーチン大統領とのやり取りからロシア側のポジションが堅いこと・不動であることを理解しており、米ロ首脳会談前から「ウクライナは、クリミアは諦めるべき」と発言しており、実際に会談においても交渉の机上にも上らなかったとのことです。
ゆえに、クリミア半島関連の話題は、米ロ双方の認識ではdealbreakerと見られており、欧州各国とウクライナがこれを主張することで(ウクライナの主張については100%支持しますが、欧州の意見は原則論に過ぎないのではないかと考えます)、ロシアに約束を反故にさせる口実を与えることにつながるため、かなり和平交渉の行方は怪しくなってきます(こう書くと誤解が生じやすいかと思うため、あえて言及しますが、私もMultilateral Mediation Initiativeも、ロシアによるクリミア半島の併合を容認する立場にはなく、今回のロシアによるウクライナ侵攻同様、力による現状変更という明らかな国際法違反の事例であると認識していることを申し添えておきます)。
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