2019年に発生した重大事態いじめ事件を隠ぺい放置し、被害者サイドに不誠実な姿勢を取り続けてきた静岡県湖西市の市長及び教育委員会。当サイトではこれまで6回に渡りその詳細を取り上げてきましたが、またも市側の誠意に欠ける対応が明らかになりました。今回のメルマガ『伝説の探偵』では現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、「事件」の続報を配信。被害者が請求した情報開示により判明した新事実を公表しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:絶望の市、湖西市いじめ隠ぺい放置事件の続報
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湖西市という絶望都市。女子中学生いじめ隠ぺい放置事件でまたも市長がトンデモ発言
湖西市いじめ隠ぺい放置事件に動きがあった。
8月14日のことである、新市長である田内市長と被害保護者の面談があった。
各報道機関の記事をまとめると、田内市長は「検証委員会も再調査もしない」と被害保護者に告げ、「内部検証で第三者委員会に重大な瑕疵はなかった」と伝えた。
これを受け、被害側は「納得がいかない」と回答した。
「湖西市いじめ隠ぺい放置事件」の全貌
2019年、湖西市立の中学校に通う女子生徒が、部活動などで深刻ないじめを受けたが、学校長の思い込みによって、いじめはないとされ、その後放置、隠ぺいされた事件である。
被害側が湖西市教育委員会や市長に助けを求めるも、これらは無視されたりブロックされるなどしたが、文科省や静岡県教育委員会の指導があって、湖西市教育委員会は、第三者委員会を設置した。
この第三者委員会により、市教育委員会の対応や学校の対応があまりに杜撰であったと指摘され、いじめ被害はあったと認定されたものの、後日発表された被害側の所見書では、この第三者委員会すら国の定める重大事態いじめのガイドラインに沿わぬ形で調査が進められ、不十分な対応であったことが明かされたという事件。
被害側は、隠ぺいに関与した教職員や主体的に隠ぺいを行った当時の学校長などへの加害者からの謝罪を求めていた。また、第三者委員会の形成についてのプロセスに瑕疵がある状態で、調査結果へのプロセスが示されていないことやこの説明がないことから、情報開示やその説明などを求めていた。
また、当時の市長は、検証委員会を行うことを約束し、設置すると公言していた。この約束と宣言は令和5年12月の事である。
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市の幹部を集め被害保護者を「だまし討ち」した市長
さて、ここから先は各報道機関でも記事になっていない内情についてだ。
実は、この8月14日は、被害側が行った「情報開示請求」について、市長が、直接説明がしたいと言うことだけを告げられていた。
検証委員会を設置すると決め書面まで出して、市長が約束してからおよそ2年間、担当者は未だに、どこに推薦依頼をしたのかすら明確に示さないという状態が続いたし、何の話をするのか?問うても一切答えないということが続き、湖西市市長部局に話し合いがしたいと申し出て、やっと話ができると行ってみると全く中身のない話をされることに、被害保護者は強い徒労感を持っていた。
例えば、検証委員会にしろ、第三者委員会にしろ、その委員になってもらうには、職能団体に推薦をしてもらう運びになる。職能団体とは、弁護士さんだったら○○弁護士会とか、精神科医さんだったら○○精神医学会とかのことで、専門性があり中立な立場の専門家を呼ぶわけだ。
また、委員になってもらうために、いわゆる一本釣りという手法もよく取られる。個別に専門家に連絡を取り、協力してもらえないだろうかと依頼をして、所属する団体などから推薦状を出してもらう。
これをしなければ、人選がそもそもない状態だから、委員会の設置の第一歩にもならないわけだ。
そして、現状、多くのいじめ第三者委員会では、これを設置する自治体は職能団体から予算の驚異的な低さやあまりに重たい責任と仕事量を理由に断られるという事態が相次いでおり、予算の確保や職能団体の選定が重要なのだが、湖西市は検証委員会をやりますと市長が公言して約束しておきながら、この具体的な行動をしている様子が見受けられなかった。
8月14日面談も、いったい何の話かを何度もメールしたが、返信メールの内容には、「開示内容についての説明をしたい」のみで、明確な回答はなかった。
つまり、8月14日の面談に、被害側は開示請求で出てきた書類についての説明を受けるつもりでいき、あまりに遅い進捗について期限を示そうとしていたが、市長側は副市長らも同席させて市の幹部を集め、何もしないぞを通告するつもりでいたわけだ。これを世間では、だまし討ちというのである。
情報開示請求で判明した信じがたい事実
また一方で、被害側が行った情報開示請求により、とんでもない事実が浮かび上がってきている。
被害側はいじめ第三者委員会の調査に重大な瑕疵があるとして、調査委員会の構成や設置過程から検証をする事を求めていた。これについて、当時の影山市長は、検証委員会の設置を約束し、記者会見等でも検証委員会を設置すると公言し、その進捗状況について順調に進んでいると回答していた。
しかし、実際は、ほぼ知識ゼロで頓珍漢な回答や質問を繰り返す市長部局の職員に、1つ1つの解釈を文科省のガイドラインなどを使って説明する必要があり、説明をしても全く理解を示さず、また頓珍漢な質問を繰り返すといった面談が数回行われただけで、被害側としては全く市側が動いていないという実感があった。
一方、市長が任期で変わり、影山氏から田内市長になったところで、市長側からの呼びかけで、被害保護者が面談に応じた際に、田内市長が「もともと再調査はしないことが決定していた」という不規則発言から、不信感が大きくなり、被害側はこの事件の情報開示請求をするに至ったのだ。
そして入手できた資料によると、検証委員会を依頼する先となる職能団体への委員推薦の要望はなく、全く動いていないことが分かったのだ。
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「秘密行政」という赤信号も点りかねない湖西市の対応
さらに事態は酷いことになっている。
田内市長が言うには、「内部調査をしたが重大な瑕疵はなかった」という。しかし、被害側が行った情報開示請求には、この内部調査が行われたという記載もなければ、報告書もメモも何もないのだ。
情報開示は、憲法にある国民の知る権利に由来するものであって、ここに不正や不正の意図があれば、それこそ行政による重大な瑕疵に当たる。
そもそも、責任ある立場として市長が約束し公言した委員会設置についての内部検証であるから、この事務や調査について職員が作成した文書図面等は公文書として取り扱われることになり、開示の対象となる。
一方で、開示の対象となることを知りながら、これを作成せずに口頭のみで事務を進めたのであれば、これこそ秘密行政という赤信号が点るところだろう。
情報開示にはその回答において、開示決定や不開示があるが、重大な問題であるのだから市長の意思決定の過程の担保として報告書等は作成するのが普通であるから、実際に外部の検証委員会相当の調査を実施検討したのであれば、これら書面が被害側に開示されなかった結果を見ると不開示決定とされるところ、それらの決定はなく、そもそも書面が存在しないことが、証明される結果となっている。
つまり、結果と過程をみれば、内部検証や調査は事実行われた痕跡がないのだから、やっていないと評価できることになる。
これこそ、重大な瑕疵といえるのではないだろうか。民主主義的意思決定プロセスを示すことができない政治は、独裁的であって極めて危険と言わざるを得ない。
記者すら戸惑った市長の「トンデモ発言」の連発
被害保護者によれば、8月14日当日はとんでも発言の連発であり、開いた口がふさがらず、聴きつけた記者も、市長がする約束や公言した約束はそんなに軽いものではないはずなのにと戸惑っていたそうだ。
また、検証委員会で検証する内容に「六項目説明の有無」があった。この「六項目説明」とは、文科省が公表している「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」において、調査の目的や調査の対象など重要な6つの項目を被害側にも加害側にも説明するように求められているが、この説明を被害側も加害側も受けていない事実であった。
そして、これについては第三者委員会の答申当初も、行っていないことが事実として公表されている。
しかし、2年経って、8月14日面談では、市長側は、「その都度やった」と発言しているのだ。
文科省_いじめの重大事態の調査に関するガイドラインより6項目説明のチェックシート
事実として、私も第三者委員会の委員をやったり、第三者委員会のアドバイザーやオブザーバー、設置に協力することはあるが、調査の目的や構成、調査の対象などを決めて説明をしたりすり合わせをするもっとも始めにやる基本的な「六項目の説明」は、時間もかかるため、1回しかやらない。
そもそも、調査の目的等をその都度説明をする必要はないし、それをやっていたら時間がかかって調査も会議を検討もできないのだ。
これは推測に過ぎないが、実際に湖西市教育委員会や市長部局の責任者と話をしていて、基本的な知識がないと痛感していたから、未だに、全くいじめ防止対策推進法や文科省のガイドラインを読んでいないのではないかと思えてならないのだ。
基本中の基本がわかっていない人たちが要職に在り、いじめ問題の第三者委員会等は、法律上、用意された最後の砦ともいえる制度を司っている。これがどれだけヤバい事か、今の日本の危うさを少しでも感じている賢い読者の皆様ならよくわかるであろう。
被害側は今後も再調査委員会の設置を求めていくとしているということだから、関係省庁にも連絡報告を行って、追跡していく。
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他の重大事態いじめでも不誠実な対応を繰り返す湖西市
湖西市いじめ隠ぺい放置事件については、前任の団体がいます。すでに解散廃止されたNPO法人さんですが、私がサポートに入ったのは2年前の答申直前のことです。
内容を見て、この第三者委員会の構成はダメだと思いました。理由は第三者性が委員の構成から担保できていないことや、六項目の基本的な説明がなく、被害側が知らぬ間に委員会が発足して突然に近い形で聞き取りを行っていること、さらに、第三者委員会の委員1名については、最後の答申前に初めましてで関係者に会っているという事実があるからでした。
そして、5月の答申は、中間報告をしたいと呼び出され、私の同席を拒絶され、被害側に専門家がいない中で無理やり最終報告ですとだまし討ちをして、数時間後には記者会見をされてしまいました。
私は数時間で所見書の骨組みを作り、被害側が意見表明できるように彼方此方の手配に走ったわけです。無事、そうした対応は完成しましたが、使命感のみで援軍にはせ参じたら、それ処では無いもっとも激しい最前線に置かれた気分です。
それにしても、今回もだまし討ちという、これはお家芸なの?と思うくらいずるい方法をするのだなと思います。
実際、他の重大事態いじめも発生中であり、本来重大事態いじめの要件を満たすが不誠実対応を繰り返し行い、被害側に戦意喪失されたという相談も入っています。湖西市に関しては。
折角、国内で最も有効ないじめ対策である大阪寝屋川市のいじめ対策プランを導入したはずなのに、それが活きていないというのは、絶望感しかないなと思うところです。
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image by: X(@湖西市役所【公式】)